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注目の演奏会

終了済み演奏会の記録（敬称略）

2012.05.20（日）	吉久夏子　「Nostalgia　母の思い出に」　歌笛堂（ＪＲ高槻駅前）　開場 13：30　開演 14：00　2,000円（要予約）　＝Sold Out＝
	→モスクワ音楽院に長期留学していた吉久さんが、チャイコフスキーの「四季」全曲を演奏される予定です。 吉久さんのコンサート案内のページへ
鑑賞メモ：
2012.05.20（日）	次元三重奏団 第四章（Vn.馬渕清香、Vc.池村佳子、Pf.藤井快哉）　イシハラホール　開場 13：30　開演 14：00　前売り：3,500円（一般）、2,500円（学生）
	→ 昨年、宮本聖子さんとのDuo、Moonstonesの結成記念コンサートですばらしい演奏を聴かせてくれた馬渕清香さんが以前から活動しているトリオの演奏会。2009年10月23日の「序章」以来、章数を一つずつ増やしつつ継続している「本公演」の5回目です。 イシハラホールの公演カレンダーへ
2012.05.18（金）	イグナツ・リシェツキ ピアノリサイタル 　 岸和田市立 自泉会館 開場 18：30　開演 19：00 一般前売2,500円 学生1,500円
	→昨年の11月20日以来の大阪公演です。日本との縁が深く、じっさい、本人は日本語ペラペラです。自泉会館のピアノは今年31歳になるYAMAHA CF。地元の音楽家たちに大切に弾き込まれ、腕利きの調律師にメンテナンスされてきたコンサートグランドは、よく枯れた「鈴鳴り」の音を聴かせてくれます。若き俊英リシェツキの熱い演奏に加えて、Ｖｉｎｔａｇｅとも形容できるピアノの音色にも注目（注耳？）したい演奏会です。 公式チラシの取り込み画像pdfへ
2012.05.12（土）	室内楽の楽しみＩＶ　弦楽三重奏と共に　Vn.松田淳一　Va.植田延江　Vc.日野俊介　（その他の出演者：白原理香、ほか。公式チラシをご参照ください。）　貝塚市コスモスシアター 中ホール　開場 18：00　開演 18：30　1,000円
	→大阪南部の貝塚市で「室内楽の楽しみIV　弦楽三重奏と共に」という演奏会があります。表題は「室内楽」となっていますが、弦楽三重奏＋αで演奏される、歌ものもある多彩なプログラムです。昨年聴きに行きましたが、この内容で1,000円は超良心的な価格です。話題の「水間鉄道」乗車を一緒に楽しむというプランも面白いと思います。 公式チラシの取り込み画像pdfへ
2012.04.29（日）	田中正也・關谷範子　～第4回ジョイフル･ピアノコンサート～　岸和田市立 自泉会館ホール 開場 13：30　開演 14：00 一般前売2,500円 当日3,000円 学生1,500円
	→早くも第4回（番外編を含めると5回）を迎える好評のジョイフルコンサート。田中正也さんの超絶技巧がきらめく曲ももちろんありますが、このコンサートの聴きどころは、ピアノの初学者でもレパートリーになっているような曲を、田中さんや關谷さんが超真剣に弾くとどうなるのかというところ。曲に対する認識や印象が大きく変わること間違いなしです。ソロだけでなく、四手連弾や、二台ピアノもある多彩なプログラムが予定されています。詳細は田中正也さんの公式Webサイトをご参照ください。 田中正也さんの公式Webサイトへ
鑑賞メモ：
2012.04.28（土）	大久保理紗　ラ・フォル・ジュルネ琵琶湖公開マスタークラス①　講師：クレール＝マリ・ルゲ（ピアノ）　時間： 12:30-13:30　　会場： 小ホール 先着300名　無料　事前申込制（3歳以上入場可）
	→神戸芸術センターの第60回定期演奏会（2012年12月18日）ですばらしい演奏を聴かせてくれた大久保さんが、恒例のラ・フォル・ジュルネ琵琶湖の公開マスタークラス受講者に選出されました。曲目はプロコフィエフのピアノソナタ第7番　変ロ長調 op.83です。 ラ・フォル・ジュルネ琵琶湖の公式Webサイトへ
2012.04.20（金）	馬渕清香 Solo Live　「孤高のヴァイオリニスト　渾身のソロライブ」　高槻市総合市民交流センター ８Ｆイベントホール　（ＪＲ高槻駅前）　開場 18：30　 開演 19：00　2,000円　問合せ先：花音楽企画
	→昨年、宮本聖子さんとのDuo、Moonstonesの結成記念コンサートですばらしい演奏を聴かせてくれた馬渕清香さんの、無伴奏ソロでの演奏会です。 演奏予定曲目 ・クライスラー：レシタディーヴォとスケルツォカプリス ・プロコフィエフ：ソロソナタ ・イザイ：ソナタＮｏ．２ ・バッハ：パルティータＮｏ．２ 関西クラシック音楽情報へ
2012.04.07（土）	ナカシオン定期ライブ　甲子園口 Live & bar Uncle Jam （西宮市甲子園口3丁目15-9 秋津州ビル1F　0798-64-5405　JR甲子園口駅下車 徒歩３分 ） 開場 19：00　 開演 20：00　テーブルチャージ500円＋投げ銭（飲食代別）
	→２か月に一度、第一土曜日に行われている Uncle Jam の定期ライブ。アットホームで清潔で居心地の良いお店なので、付加価値の高いライブです。詳細は会場のWebサイトの「ライヴ 情報」のページを参照してください Uncle JamのWebサイトへ
鑑賞メモ：
2012.04.06（金）	宮本聖子 ピアノリサイタル　～水の音楽～　ムラマツ・リサイタルホール新大阪　開場 18：30　開演 19：00　3,000円
	→昨年、馬渕清香さんとのDuo、Moonstonesの結成記念コンサートで力強さと繊細さを併せ持つすばらしい演奏を聴かせてくれた宮本聖子さんの、約１年半ぶりのピアノリサイタルです。今回も知的に構成されたプログラムで、しかも解説トーク付ということなので、充実の演奏会となるに違いありません。詳細は下記リンクよりクラシックのコンサート情報サイトを参照してください。 コンサート情報サイトtuttiへ
鑑賞メモ：
2012.04.06（金）	針山憲夫のクラリネットファンタジー　Tio Special Concert　出演：Cl.針山憲夫、Pf.針山和子、Acc.L.フレディ　集・空・間 Tio （JR芦屋・阪神芦屋より徒歩５分、TEL：0797-25-0177）　開場13：30 開演14：00　2,500円（お茶とお菓子つき）
	→軽妙なトークも交えた楽しい演奏会シリーズ。現在はドイツ・ベルリンと日本往復して活躍している針山さんが、今回はパリから来日したアコーディオンの名手L.フレディと共演します。 会場のWebサイトへ
2012.03.31（土）	音のパズル　～ヴァイオリン、マリンバ、ピアノが奏で紡ぐ音のピース～　出演：Vn.木村修子・時本さなえ、Mar.豊浦由美子、Pf.吉久夏子　プチ・エル大阪 （京阪・地下鉄天満橋駅下車、西へ300m　エル・おおさか＝大阪府立労働センター内）　開場 13：15　開演 13：45　2,500円
	→大阪教育大学出身者によるコンサート。ピアニストは拙サイトで何度も記事にしている吉久夏子さんです。詳細は下記リンクより吉久さんのサイトを参照してください。 吉久さんのコンサート案内のページへ
鑑賞メモ：
2012.03.27（火）	四次元三重奏団 （Vn.馬渕清香、Vc.池村佳子、Pf.藤井快哉）　サロンコンサート ”Russian☆night”　モーツァルト・サロン（大阪市北区西天満 5-10-14）　開場 18：30　開演 19：00　2,500円
	→ 昨年、宮本聖子さんとのDuo、Moonstonesの結成記念コンサートですばらしい演奏を聴かせてくれた馬渕清香さんが以前から活動しているトリオの演奏会です。 モーツァルトサロンの演奏会情報へ
鑑賞メモ：
2012.03.24（土）	GIN（ジン）ソロギターライブ　甲子園口 Live & bar Uncle Jam （西宮市甲子園口3丁目15-9 秋津州ビル1F　0798-64-5405　JR甲子園口駅下車 徒歩３分 ） 開場 19：00　 開演 20：00　テーブルチャージ500円＋投げ銭（飲食代別）
	→昨年末にソロアルバム「MaHaLo]をリリースしたナカシオンのギタリストGINさんのライブ。ナカシオンとして出演するときには数曲しか聴くことのできないソロをたっぷりと聴くことのできるチャンスです。詳細はGINさんのWebサイトの「Live Schedule」のページを参照してください。関西地域以外でのライブについても多数情報が掲載されています。 GINさんのWebサイトへ
2012.03.16（金）	竹田景子 ピアノリサイタル　宝塚ベガ・ホール （阪急宝塚線　清荒神駅下車 すぐ）　18：30開場　19：00開演　2,500円
	→現時点での情報は、コンセール・メランジュにて配布された手作りチラシに基づいています。まもなく正式なチラシが配布されるようになると思いますので、続報をお待ちください。 →2011年11月に公式チラシがリリースされましたので、その画像をリンクしておきます。 公式チラシの取り込み画像へ（外部リンク：出演者のブログ記事です）
鑑賞メモ：
2012.02.19（日）	田中正也×佐藤卓史 スーパーバレンタインコンサート　SAYAKAホール（大阪府狭山市文化会館小ホール）　開場13：30　開演14：00　前売 2,000円　当日 2,500円　（全席自由）
	→詳細および最新情報は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2012.01.22（日）	2012 New Year Gala Concet　出演：白原理香ほか　貝塚市コスモスシアター 中ホール 13：30開場 14：00開演　1,000円
	→大阪南部在住のアーティストを中心とした新年のガラ・コンサートです。詳細は下のリンクから公式チラシのｐｄｆをご覧ください。 公式チラシの取り込み画像pdfへ
鑑賞メモ：
2012.01.21（土）	GIN 1st solo album 「MAHALO」　レコ発ライブ　会場：ドルフィンギター江坂店（大阪府吹田市江坂町1-23-34 第2梓ビル5F）　19：30開場　20：00開演（約60分）　無料
	→ブログで何度も記事にしているナカシオンのギタリストGIN（ジン）さんの最初のソロアルバムが発売になり、そのライブイベントがあります。会場は、アコースティックギターのファンならその名を知らぬ人はないギター専門店。CDを買ってライブを楽しむことに加えて、店に並ぶ世界の名器を鑑賞する（もしくは、買う！…ピアノ並みの価格のものも少なくないですが）こともできます。 なお、詳細はGINさんのWebサイトの「Live Schedule」のページを参照してください。レコ発ライブはこの後も各所で行われるようで、このページにはその情報も掲載されています。 →GINさんのWebサイトへ
鑑賞メモ：
2012.01.21（土）	北順佑（きたじゅんすけ）プロデビューリサイタル　会場：B-tech Japan 大阪リサイタルサロン 14：00開場 14：30開演　2,000円
	→リサイタル当日にまだ18歳という文字通りの「若手」ピアニスト。（「書」の世界では還暦前はみんな「若手」だったりしますが・・・）　経歴を見てある人はこう言いました、「骨のありそうなやっちゃな」。プロ・デビューのための舞台は完璧。この環境をいかしきった演奏会となることを期待します。
鑑賞メモ：
2012.01.19（木）	丸山依里ソプラノ・リサイタル（毎文クラシック41）　Pf.：竹田景子　お話：門田展弥（作曲家・音楽評論家）　会場：毎日文化センター２階ロビー　18：00開場　18：30開演　500円　（要事前電話申込み→毎日文化センター）
	→昨年のちょうど今ごろ（1月16日）に「ニッポン人ノ セイヨウオンガク Vol.2」（於：兵庫県立美術館のアトリエ１）ですばらしい演奏を聴かせてくれたコンビが今年はフランス歌曲をたっぷりと聴かせてくれます。プログラムされているのは、ラヴェル、プーランク、サティ、グノー、ほか。歌詞を読むと、ユニークを通り越してシュールな世界に入り込んでしまっている曲もある作品たちを、このお二人がどう聴かせてくれるのか？　いまからワクワク・ドキドキです。
鑑賞メモ：
2012.01.07（土）	船本孝宏 個展演奏会Ⅲ　船本孝宏オーケストラ作品ニューイヤー・コンサート　～オーケストラへのあこがれ～　会場 ：クレオ大阪中央（地下鉄谷町線「四天王寺前夕陽ヶ丘」駅下車北東へ徒歩３分 ）　開場 16:00 、開演 17:00　一般：2,000円　学生：1,500円　高校生以下：1,000円
	→関西で活躍する若手作曲家、船本孝宏さんの通算３回目となる個展演奏会があります。毎回、彼の人望の厚さを証明するように、プロ・アマ（学生）を問わず多数の音楽家が演奏に協力するのですが、今回はなんと、すべての曲がオーケストラ（船本孝宏シンフォニック・オーケストラ：約50名の編成）で演奏されます。私は第二回の個展演奏会を拝聴しましたが、聴きやすい曲が多く、会場の雰囲気もアットホームなので、肩の力を抜いて楽しめる演奏会だと思います。
鑑賞メモ：
2012.01.07（土）	遊音堂ティータイムコンサート　出演：小倉浩晃(Vn.)、木村修子(Vn.)、吉久夏子(Pf.)　遊音堂２階Youホール　開場13：30　開演14：00　2,500円　当日3,000円
	→モスクワ音楽院に長期留学していた吉久夏子さんとヴァイオリニスト２人による昼下がりのコンサートがあります（お茶・お菓子つき）。場所は大阪の福島ですが、ここのピアノは New York STEINWAY で、相当定評のある楽器（個体）のようです。ロシアピアニズムの流れをくむ吉久さんが、その実力を遺憾なく発揮できる環境といえるかもしれません。詳細は以下のページをご参照ください。 http://youondow.com/2011/12/10/20120107/
2011.12.25（日）	プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ "エクスクールスィャ"第4回　出演：田中正也　神戸芸術センター：プロコフィエフホール　開場13：30　開演14：00　前売2,500円　当日3,000円　学生1,500円　（全席自由）
	→詳細および最新情報は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.12.23（祝）	大阪大学混声合唱団 第53回定期演奏会　客演指揮：佐藤健太郎　ピアノ：竹田景子　伊丹市文化会館いたみホール 大ホール　開場17：00　開演17：30　500円　全席自由
	→プログラムは以下の通りです。 　1st stage：混声合唱のための「八重山・宮古の三つの島唄」 　2nd stage：「Missa pro Pace」（作曲・指揮：佐藤健太郎）、 　3rd stage：混声合唱組曲「いまぼくに」（Pf. 竹田景子）
鑑賞メモ：	天井が非常に高い大ホール（定員：1202人）は上から下までほとんど空席がない状態でした。そこに66人の合唱団。3rd stage のピアノは、これを一人で相手にする大奮闘。ふだんは繊細この上ない弱奏や、千変万化する音色と響きの移ろいが印象深い竹田さんのピアノですが、この日ばかりはアスリートでした。それにしても、この状況で平然と弾き切るピアニストの胆力の据わり方には恐れ入ります。 2nd stage のミサ曲は、国内初の全曲演奏でした。しかも国際的に活躍する作曲家自身が指揮するということで、注目度が高かったようです。
2011.12.23（祝）	saveur du poussin （サビュール・ドゥ・プサン） クリスマスコンサート　世良美術館（阪急電鉄神戸線御影駅南徒歩３分）　開場13：30　開演14：00　1,500円
	→複数のクリスチャンを含む声楽アンサンブルのメンバーが主催する、楽しくも真面目なクリスマスコンサート。近年は成長著しく、もうそのグループ名はやめた方がいいのではないか、との声も。
鑑賞メモ：	今年は、ソプラノ4人にピアノ、クラリネット、ギターが各1人の7人編成。アンコールでは客席にいた著名テノール氏（おそらく、関西の音楽ファンで知らない人はいない）が飛び入り参加しての大合唱。拍手喝采でした。こういう「大物」歌手が「聴きに行ったろか」「一緒に歌ったろか」と思うくらいに、みなさん成長してきたんだなぁ、と感慨深いものがありました。
2011.12.13（火）	ロヴロ・ポゴレリッチ ピアノリサイタル　ザ・フェニックスホール（大阪 梅田新道南東角）　開場18：30 開演19：00
	→第10回のショパンコンクールで審査員アルゲリッチの辞任騒動があったイーヴォ・ポゴレリッチの弟さん。リスト：「オーベルマンの谷」「バラード第2番」「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」、ムソルグスキー：「展覧会の絵」、などが演奏される予定です。
鑑賞メモ：
2011.12.03（土）	ナカシオン ワンマンライブ　甲子園口 Live & bar Uncle Jam （西宮市甲子園口3丁目15-9 秋津州ビル1F　0798-64-5405　JR甲子園口駅下車 徒歩３分 ） 開場 19：00　 開演 20：00　テーブルチャージ500円＋投げ銭（飲食代別）
	→2か月に一度、第1土曜日に行われている Uncle Jam での定期ライブ。今回は秋にリリースされた新譜（CD）を入手できるはずです。
鑑賞メモ：	２か月ぶりのナカシオンライブ＠甲子園口 Uncle Jam （2011年12月3日） 甲子園口、Uncle Jam での定期ライブ、今晩です。 というか、もう「晩」なんですが…。 これから聴きに行きます。 いろいろとするべきことが多くて、優先順位を付けてこなしていくと、結局、ブログを書くことが最後になって、しばらく更新できない日が続いています。ネットの世界では影が薄くなっているけれども、リアルの世界ではリサイタルも聴きに行っているし、ピアニスト作家さんの小説も読んでるし（12月1日に雑誌に100枚の大作が掲載されたところ）、室内楽のレクチャー・コンサートも聴きに行ったりしています。 そんななかでのナカシオンライブ。今回は10月にリリースされている新譜ＣＤを手に入れることができるはずで、大いに期待しています。続きを必ず書く決意のもとに、事前の記事を投稿しておく次第です。 －－－－－　で、聴いてきました。－－－－－ 甲子園口の駅前にはクリスマスイルミネーションが輝いていましたが、空気は穏やかで、日が暮れてもコート不要の、師走とは思えぬ陽気でした。 今日の定期ライブはほぼ満席の盛況で、ふだんはコの字型一重の客席ですが、一部お客さんが二重になるところもあり、またステージ全体を見渡すことはできないバーカウンターから聴いているお客さんもあったようです。 盛況に一役買ったのはパーカッションかもしれません。オル・トグンさんという芦屋在住のパーカッショニストが、シオンさんのジャズ人脈からのご推薦で共演し、カホンとジャンベで参加しました。ギタリストのＧＩＮ（ジン）さんいわく、ナカシオンのこれまでのライブでパーカッショニストが加わったことはほとんどないとのことで、Uncle Jam ではＣＤリリース後初ライブとなるこの日にふさわしい、稀少価値のあるものでした。 オルさんの奏らすカホンやジャンベは、日本人にはなかなか出せないタイトなリズムを刻むだけではなく、その音色にも繊細な表情があって、ビートの効いた曲でも微妙に空模様が移ろってゆくところが魅力のナカシオンの曲で、手や指のさまざまな部分をものすごく細かく使い分けて、ナカシオン作品に気持ちよく溶け込んで行きました。これまでにストリート・パフォーマンスで聴いたことのあるカホンやジャンベの音とは一味もふた味も違ったもので、この楽器の表現力の奥深さを知ることができました。個人的には、「See you again」でのジャンベとの共演が印象深かったです。 さて、シオンさんとＧＩＮさん自身の演奏については、今日はシオンさんの声がとても気持ちよく出ていて、細部にわたってこの上なくレガートでした。あとでご本人に伺ったところ、今日が特別に体調が良かったというわけではないとのことだったのですが、ＣＤ録音の大仕事を終えて間がなかった前回と、ステージでの表現に専念できるようになった最近との状況の違いがあるのかも、などと考えたりしました。そして、その声で、念願かなって「ピアス」を聴くことができました。前回聴いて感動してから８か月後にようやく二度目の拝聴。やはりこの曲はいいです。気持ちを表現するのに気持ちをそのまま言葉にするだけが術ではないということを教えてくれる、大人の歌です。 ＧＩＮさんの今日のギター、これまでとは微妙に味わいが変わっていました。やや倍音が少な目でソリッドな音。理想の音作りをたゆむことなく追求していくのが身上のＧＩＮさんらしいなぁ、と思って聴いていました。そして、普段はパーカッションと共演すること機会がないのに、パーカッションが加わった時には、それを含めて完全に調和した伴奏が、おそらく本番前の短時間の打ち合わせで、できあがってしまうところがすごいです。このあたりはもっぱら楽譜の正確な再現を旨とするクラシックの音楽家には容易ではないことで、自ら作曲も編曲も演奏もこなすギタリストならではの世界でしょう。 今日のギター・ソロはＧＩＮさんがナカシオン結成以前から弾き続けているという、ある意味でＧＩＮさんのギター演奏の歴史を語る一曲ともいえる「楓」でした。演奏のあと、シオンさんがＧＩＮさんに訊く形での解題があったのですが、曲を聴いた直後だけに聴衆一同、大納得。ことに相方のシオンさんが、しきりに感心していたのが面白かったです。何をモチーフにした曲であるのか関心がある人は、ぜひナカシオンのライブを聴きに行ってお確かめください。シオンさんが感心していた理由がわかると思いますよ。 終演後は、まずはナカシオンの新譜の購入。お二人にはもちろんサインをしてもらいました。こうして手に入れたＣＤは、後になってもジャケットやディスクを見るたびにその日のことが思い出されて、ただのモノではない、大切な存在になるような気がします。なお、ＧＩＮさんはナカシオンのＣＤとは別に、ソロＣＤをこの12月中にもリリースされる予定だとのことで、これもとても楽しみです。 シオンさんとのお話の中では、ご自身がお客さんに歌を届けるときに心の中に描いているものについて、聞いていて思わずハッとしてその刹那に忘れがたく心に深く刻まれるような言葉があって、とても感動しました。良い演奏の背後にあるのは、技術的なものだけではないのだということを教えてくれるものでした。 最後に、今日パーカッションを演奏したオルさんと、1stステージと2ndステージの合間にお話をさせていただくことができました。そのなかで、オルさんがご出演になるイベントの案内をいただきましたので、下にチラシ（はがき）の画像をリンクしておきます。会場は御影で便利のよいところですので、打楽器やダンスに関心のある方はご検討ください。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の12月3日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。ただし、テキストのみで画像は含まれていません。）
2011.11.20（日）	イグナツ・リシェツキ ピアノリサイタル　泉南市文化会館（南海本線樽井駅・ＪＲ阪和線和泉砂川駅下車ともに徒歩15分）　開場13：30　開演14：00　シングル 2,500円　ペア 4,000円
	→5月28日以来の大阪公演です。日本との縁が深く、じっさい、本人は日本語ペラペラです。5月のリサイタルでは終演後のお客さんとの交流がかなり盛り上がっていましたが、今回のリサイタルも、より身近な存在として、ショパンの故郷ポーランドのピアニストの演奏を聴くことができるでしょう。 公式チラシの取り込み画像pdfへ
鑑賞メモ：
2011.11.05（土）	大阪府立天王寺高校 第24回桃陰文化フォーラム ＜アンサンブル フェリーチェによるオータムコンサート＞　出演：吉野里美（Sop.) 齋木慶子（Sop.) 白原理香（Pf.） 天王寺高校北館３階多目的ホール 開演10：00 無料（要事前予約） 上履き・靴袋持参のこと
	→プログラムは以下の通りです。 　第 I 部：Opening,、日本の歌part1、ピアノソロ、オペラアリア・フランス編 　第 II 部：日本の歌part2、ピアノソロ、オペラアリア・イタリア編、Finale
鑑賞メモ：	アンサンブル フェリーチェ＠天王寺高校を聴いてきました。（11月5日） これまでにも何度か記事を書いているアンサンブルフェリーチェ、今回は天王寺高校の第24回桃陰文化フォーラムとして開催されたオータム コンサートを聴いてきました。天王寺高校は大阪の由緒ある公立校の一つですが、大阪の長い歴史と伝統のある公立高校では、天王寺高校に限らず、卒業生（や教員）のネットワークを活用して超高校レベルの授業を開講し、生徒たちに学術・文化に関わる大きな刺激を与えているのです。講師は各界から招かれるわけですが、今回は秋恒例の音楽コンサートで、そこにフェリーチェが招聘されたのでした。私自身も大阪の府立高校の卒業生なので、出身校ではないのだけれどけっこう親近感を覚える企画でした。 フルメンバーは５人のフェリーチェですが、今回はソプラノ２人にピアニスト１人の構成でした。ソプラノは吉野里美「先生」と齋木慶子「先生」、ピアニストは白原理香「先生」です。ふだん「さん」づけで呼びあっている人も、学校だと全員が「先生」になるのですな。ちょっと不思議な感じでした。 このなかで一番関心があったのが齋木さん。フェリーチェの5人の中では一番最近になって（今年の2月26日に）拝聴したソプラノさんなのですが、メゾやアルトも顔負けの慈愛に満ちた深い声がすばらしく、終演後に本人ならびに以前から面識のあるピアニストさんにファン宣言をしていました。今回、ピアニストさんから「今度、齋木さんが歌うよ～」と案内を受け、けっこうくたびれてきた「元」府立高校生が、約100名の紅顔の美少年・美少女にまじって講座を聴講したのでした。（なお、この講座は父兄や近隣住民に公開されているものであり、無理に押しかけていったのではありません、念のため。） 演奏会は、「講座」らしくとてもしっかりと構成されていて、ただ心地よい歌を披露するだけではなく、整理された知識が後に残るように入念に準備がなされていました。プログラムは、日本・フランス・イタリアの歌曲やアリアから選ばれた曲にピアノソロが2曲。歌では、声質の違う二人（吉野さんは軽めの声）の持ち味を際立たせるような選曲がなされていて、声質の違いがオペラでは配役の違いにも反映されているのだというところまで解説がなされました。他方で、二人の重唱では、声質が違うはずの二人の歌がどこまでも繊細に美しくそして豊かに響き合って、もう二人のどちらが歌っているのか区別がつかないほどのハーモニーを聴かせました。おそらく普通の（特別に音楽教育を受けていない）高校生の皆さんはこの響きの中に身を置いて、「声楽」の世界がいかなるものであるのかということを、言葉による説明が不要な水準で体感したのではないかと思います。 ピアノソロでは、「喜びの島」と「メフィストワルツ」の2曲が演奏されました。どちらもちょっとしたコンサートだったらメインに据えることができるような曲です。弾くだけでも大仕事だと思いますが、加えて、曲の解説も入り、メフィストワルツではヴァイオリンの調弦の音がモチーフになっているのだと、その音をピアノで実際に出して聴かせる親切さでした。サロンコンサートでもなかなかここまではしないよなぁ、と思いながら聴いていました。 演奏会は二部構成になっていましたが、後半ではドレスチェンジも。そして、音楽家のドレス選びやその保管に関する実際的な興味深い話があり、また、身体が楽器である歌手の体調管理方法についても説明がありました。 あ、そうそう、演奏の内容についてほとんど書いていませんが、そりゃもうすばらしかったです。１曲目の「歌のつばさに」が始まって10秒で体中の血管が拡張するような感じを覚えて、感動スイッチがバチンと入りました。伴奏も同様で、最近は高水準な伴奏を拝聴する機会が増えているのですが、今回もまちがいなくその一つに数えられるものでした。さまざまな曲を、オペラはオペラの、歌曲は歌曲の息づかいがしっかりと伝わってくる伴奏で支え、思わず伴奏の方にも引き込まれてしまうような、けっして「添え物」ではない存在感のある演奏でした。ピアノソロは、デッサンがしっかりしていて、安心して作品の世界に浸ることができました。 校長先生の挨拶から始まったこの日の演奏会は、終演後に生徒からの花束の贈呈があり、教頭先生の挨拶で締められました。参加費無料でしたが、とても充実した２時間でした。 追記： 桃陰文化フォーラムのWebサイトに今回の講座についての詳細な記事が掲載されています。
2011.11.03（祝）	2011明石芸術祭 第40回 音楽のつどい 出演：松本真奈（Sop.) 竹田景子（Pf.）　明石市立市民会館（アワーズホール）大ホール 開演12：00 無料
	→合唱祭第2部の7番目に唯一の独唱として出演されます。演奏曲目は、(1)落葉松、(2)オペラ「ドン・パスクワーレ（Don Pasquale）」より "あの目に騎士は"の2曲です。
鑑賞メモ：	明石市芸術祭第40回「音楽のつどい」を聴いてきました。（11月3日） 12時開演で16時まで、途中休憩10分のみで延々続く大イベントに参加していた27組の出演者の中で、知っていた出演者（というか、お目当て）は一組だけでしたが、私にとって明石は生まれ故郷で勝手知ったる街なので、祝日の気分転換もかねて足を延ばしました。 聴きたかったのは、合唱が中心だったこの日の「つどい」のなかで唯一の独唱だった松本真奈さん（ソプラノ）と竹田景子さん（ピアノ）。第２部７番目のご出演でした。 ご存じのように、昨年度の日本音楽コンクールの声楽部門（歌曲）で、歌い手さんとともに本選会まで進まれた竹田さん。今回も、すばらしいソプラノさんと組んで、たった２曲、合計10分ほどの演奏でしたが、芸術的には堪能できるものでした。実際、演奏中のホール内は水を打ったような静けさにつつまれ、演奏終了後はこの日一番の大喝采でホールが満たされました。 ソプラノの、深い深い藍青色の空に吸い込まれていくような澄み渡った清らかな声、そしてピアニストの、弱奏にしてなお汲めど尽きせぬ泉のように多彩な音色が生命感のある息づかいで湧出してくる伴奏。遠方まで聴きに行った甲斐のあるすばらしいものでした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の11月6日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.10.30（日）	ドイツから東方への音楽旅　～東日本大震災復興支援チャリティコンサート～　出演：時本さなえ（Vn.）　吉久夏子（Pf.）　歌笛堂（ＪＲ高槻駅前）　開演14：00　2,000円
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	時本さなえさん、吉久夏子さんを聴いてきました。（10月30日） お二人の名前のどちらを先に書くべきか悩んだのですが、プログラムに書かれている順番としておきます。 ちょうど開演時間頃に雨が降り出すというあいにくの天気でしたが、会場となったJR高槻駅前のカフェは満席で演奏会が始まりました。冒頭、この日の演奏会は東日本大震災の復興支援チャリティーで、集まったお金は楽器修復基金に提供されるとの案内がありました。 ほぼ１年ぶりに拝聴した時本・吉久duoの演奏でしたが、お二人の演奏をたっぷりと聴ける機会は今回が初めてでした。時本さんはモダンヴァイオリンとバロックヴァイオリンの二丁に、弓も二種類用意して、それぞれ弾き分けるという気合の入ったプログラム構成で、演奏前には、二種類のヴァイオリンの種類のみならず、バロック・ボウについても実際に音を出して、現代の弓（モダン・ボウ）との出音の違いを聴かせてくれるという親切ぶりでした。サロンコンサートでしたので、微細な響きの違いまで生々しく聴き取ることができ、演奏を楽しむだけでなく、貴重な勉強の機会にもなりました。 最初の曲、ビーバー作曲"「ロザリオのソナタ」よりパッサカリア"はバロックヴァイオリンによる無伴奏で演奏され、古楽器の音色を堪能しました。ガット弦だと思うのですが、素朴だけれど意外に力強い音色だと感じました。後半のプログラムになりますが、ヘンデル"ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」"はモダンヴァイオリンとバロック・ボウで、バルトーク"ルーマニア民族舞曲"はモダンヴァイオリンとモダン・ボウで、それぞれ演奏されました。 ピアノの方は、このお店に常設のグランドピアノでした。外観からして年季が入っていたのですが、演奏された最初の音を聴いた瞬間に「古色蒼然とした音やなぁ～」と思ってしまいました。演奏会終了後に確かめたところ、メーカーは手作りピアノメーカーとして著名なDIAPASON社製で、フレームにはNo.183とレリーフされていました。すべての部分にわたって時代を感じる質感がありましたが、このちょっと気難しい面がありそうなピアノを、吉久さんはまさに「鳴らしきる」感じで演奏し、プログラムが進行するにつれて高齢ピアノであることをすっかり忘れてしまうほどでした。 楽曲そのものについては、今回のプログラムには以前にホールでしっかりと聴いたことのある作品が含まれていて、解釈の違いというか、まったく別物のように聴こえる作品がいくつかあって驚きました。プログラムの（形式上の）最後に演奏されたバルトーク"ルーマニア民族舞曲"はその代表選手？で、9月10日に聴いた Moon Stones によるものとの表現の違い（ヴァイオリンも、ピアノも）が猛烈に刺激的でした。とくに、第1曲の思い切りの良い強奏と、第3曲のヴァイオリンの、言葉では表現しきれない点描風の音色が印象に残りました。また、ピアノソロでは、チャイコフスキーの「四季」より"６月「舟歌」"と"７月「刈り入れの歌」"が、それぞれ、ロシアピアニズムの流れを引いている（別の）ピアニストさんの演奏で聴いたことがあったのですが、同じ流れにあっても吉久さんの演奏は大きく味わいの異なるもので、目に浮かぶ景色が違って見えるような気がしました。こういう小品でもピアニストによる違いは如実に出るものだなぁと、感嘆しました。 この日の演奏会のタイトル「ドイツから東方への音楽旅行」にちなんで、アンコールは、極東・日本の唱歌メドレーでした。普通とはちょっと違った面白いアレンジで、パズルのように組み込まれた日本唱歌が次々と展開していく構成。「ふるさと」に始まり、私が認識できただけで8曲を経て、再び「ふるさと」に戻ってきました。そして終演。音楽旅行は日本の「ふるさと」が終点でした。 終演後は、お二人がこの会場（普段はカフェ）で販売されている自家製のお菓子がどれほどおいしくて、また安心の品質であるかを力説していました。実は私もすでに食べたことがあったのですが、能書き不要の完成度の高さで、奇をてらったところはまったくないのだけれど、一度食べたら必ず記憶に残る味で、リピーターとなること必定です。時本さんの言葉、「水のように（いくらでも）食べることができるお菓子」はまさに、言い得て妙でした。 この日は演奏会でしたので、店頭で販売されている数量には限りがありましたが、他のお客さんと同様に私も一つ買い求めました。ホーニッヒ・マンデルをソフトにした感じの焼き菓子でしたが、目にした瞬間に購買を決心していた自分が怖いです。家に帰ってから、いつもの濃い紅茶と合わせて楽しみ、自分の直感は間違っていなかった、というか期待以上の、お菓子としての存在感のある味と食感に今回も感動して、演奏会の最後の最後の締めくくりとなりました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の10月30日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.10.23（日）	高槻音楽家協会定期演奏会　出演：石原千歳（Sop.）吉久夏子（Pf.）他　高槻現代劇場中ホール
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.10.08（土）	萬谷衣里ピアノ・リサイタル 開演 16：00　京都大学YMCA会館2階ホール（市バス京大正門前西へ200m）　主催：京都楽癒コンサート　全自由席　運営協力金2,000円程度
	→昨年ショパンコンクールに出場された日本人のお一人である萬谷さんの演奏を生で聴くことのできる稀少な機会です。ポスターに記された演奏予定曲目は以下の通りです。 バッハ (リスト編曲)：前奏曲とフーガ イ短調 BWV543 リスト：二つの演奏会用練習曲より「森のざわめき」 リスト：B-A-C-Hの主題による幻想曲とフーガ リスト：子守歌 S.198 リスト：パガニーニ大練習曲集より　第6番「主題と変奏」イ短調　 リスト：愛の夢　～ノクターン第3番 ブゾーニ：　J.S.バッハによる幻想曲　 バッハ（ヘス編曲）：「主よ、人の望みの喜びよ」（カンタータ第147番より） バッハ（ブゾーニ編曲）：シャコンヌ（無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調より）
鑑賞メモ：	萬谷衣里さんのリサイタルを聴いてきました。（10月8日） 10日前に某カフェのマスターに教えてもらわなければ聴き逃している演奏会でしたが、今日実際に聴きに行って、いろいろな面で、この演奏会の聴衆の一人になれたことは、人生の中でそんなに何度も巡りあうことのない幸運だったと思いました。その余韻にずっと浸っていたいようなすばらしい演奏会でした。 もうこれは、ファンになるしかない！ 当日は、11月23日発売の1stアルバム「East Side Rhapsody」の先行販売もあり、売り切れ前に手ぬかりなく入手した上に、サインもしてもらい、さらに、予定された席数をはるかに超える聴衆が詰めかけたとはいえ、基本的にアットホームな演奏会でしたので、初対面ながらピアニストとお話もさせていただく機会（時間的余裕）もあり、とても充実していました。 もちろん、こういう交流面は二義的なもので、音楽的な面が第一義なのですが、それはもう、掛け値なしに最上質のもので、もしかして今日初めてピアノ・リサイタルと聴くという人がいたとしたら、「これが普通やと思ってたら、ほかの演奏会を聴けなくなりますよ」と余計な心配が心をよぎるほどでした。 情報発信元のマスター、紅葉色のシャツを着て私のすぐ近くにで聴いていました。お忙しいので最後までは聴いていられなかったご様子でしたが、それでもなんとか時間を作って聴きに来るなんて律儀であります。マスターに質問されてその場で答えられなかったこと、終演後に主催者（司会進行役）の人に尋ねておきましたので、今度お店に行ったときにお話しいたします。 演奏についての具体的な感想は、後日（下記の公演終了後に）この続きに書こうと思います。 <<この日と同じプログラムの演奏会が関東でもあります。>> 10月12日（水）埼玉県川口総合文化センター　リリア音楽ホールにて　18：30開演。 首都圏在住の方にはつよくつよくおすすめします。 詳細はピアニストの公式Webサイトをご覧ください。 お約束の「具体的な感想」です。（10月15日追記） プログラムの進行に沿って書いていくと書きたいことがありすぎていつまでたっても擱筆できそうにないので、順不同でかいつまんで書きます。 まず、音そのものが素晴らしい。この日のピアノは製造後16年が経過したYAMAHAのＣ２だったのですが、音だけを聴けば、こんな小さなピアノで弾いているとは到底思えない、陰翳深く繊細な表現に満ち溢れたものでした。終演後に主催者に尋ねたところ、このピアノは演奏会の主催団体に所属する調律師さんが日ごろから念入りに調整しているそうなのですが、それは条件の一つではあるかもしれないけれど、全部ではないことは言うまでもありません。 萬谷さんの演奏の印象は、澄み渡った空気の中に磨き抜かれた音の粒子が、一粒一粒くっきりとした輪郭を持って、あるいははじけるように、あるいはしっとりと染み込むように生成してきて、強奏が連続するような曲でも、濃いペンキで背景ごと塗り潰してしまうような息苦しさはいっさいなく、むしろ強奏の中にこそ、聴いている者をハッとさせる一閃の光芒が煌めいたり、天の川のようなやさしく柔らかい音のヴェールがふわりと舞ったりするのです。 さらに、音の美しさだけではなく、作品のすべての音符には解すべき意味があるのだということをひしひしと感じさせる、ゆるぎない解釈。これは、プログラムの最後に演奏されたシャコンヌ（バッハ＝ブゾーニ）で頂点に達しました。私の事前の予想では、プログラムの最後だし、ガツンと体育会系で向かってくるのではないかと思っていたのですが、じっさいはむしろ逆でした。通常よりも遅めといってもよいテンポで始まった演奏は、和音はどこまでも丁寧・精確に揃い、一つ一つの旋律はその意味をかみしめるように丹念に紡がれていきました。爆発的な強奏やむやみな速弾きで聴き手をびっくりさせるのではなく、聴き手にピアニストが伝えたいことを確りと受け止めることができるだけのいとまを与える演奏。「一盛いくら」のまとめ売りのように感じられる音が一切なく、聴き手はこの演奏を、一音すらおろそかにすることなく心に刻まねばならぬ！と、自然に思ってしまいました。この日聴いたシャコンヌは、私がこれまでに聴いたことのある演奏の中で最高のものでした。 リサイタルはＭＣトークを交えて進行したのですが、萬谷さんのお話は、謝辞に始まり、曲の解説や、関連するエピソードなど、さまざまな話題をごく自然に聴き手に語りかける人間味に溢れるもので、そこにはピアニスト萬谷衣里が等身大で立っているという感覚がありました。そしてこれは、その後の曲間トークでも変わるところなく、否、時にはより生々しい感情が表情や声にあらわれて、聴き手が思わず共感を覚えるところもありました。ピアノ演奏に限らず、幅広い分野で表現力に満ち溢れた人だなぁ、と感心しました。 この日の演奏会の記憶は、会場となった歴史ある建物の佇まいと、ピアニストのドレスのラピスラズリのような深い藍青色とともに、ずっと心に残っていくことでしょう。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の10月8日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.10.01（土）	ナカシオン ワンマンライブ　甲子園口 Live & bar Uncle Jam （西宮市甲子園口3丁目15-9 秋津州ビル1F　0798-64-5405　JR甲子園口駅下車 徒歩３分 ） 開場 19：00　 開演 20：00　テーブルチャージ500円＋投げ銭（飲食代別）
	→ナカシオンの世界を堪能できるワンマンライブ。交通至便の会場は、バーとしても水準が高く、ゆったりと音楽とお酒を楽しむことができます。
鑑賞メモ：	ナカシオンの甲子園口 Uncle Jam 定期ライブを聴いてきました。（10月1日） 基本的に偶数月の第一土曜日に開催されているナカシオンの定期ライブ、スケジュールが合わずしばらく聴きに行くことができなかったのですが、この日ようやく聴きに行くことができました。昼間は新神戸でACoKのNSC、夜は甲子園口のUncle Jamと、お大尽コースでしたが、たまにはこういうのも許されるでしょう。 この日はようやく本格的な秋が訪れたと感じさせるさわやかな空気に満たされていました。実際、雲の形が夏とは全然違っていて、秋の季語でもあるうろこ雲が空一面を覆っている様子がとても印象的でした。 そんな気持ちよい秋の夜に半年ぶりで訪ねたUncle Jamは、かわらぬあたたかくて家庭的な雰囲気で、店に入ってすぐ寛いでしまいました。音楽を聴くことのできる飲食店数あれど、バランスが良いというか、特別な常連さんでなくても体の力がすうっと抜けるお店というのはなかなか稀少だと思います。同様の感想は、お客さんだけでなく出演するアーティストの多くにも共通しているようです。 開演時間が近づいてナカシオンのシオンさんが入ってきたとき、私を含めてお客さんはみんな、誰が入ってきたのか認識できませんでした。来聴者への謝辞を口にしたその声を聴いた時に初めて「あ、シオンさんなんだ」とわかって、みんな驚いたのですが、そのわけは…。知りたい方はぜひライブ会場に足を運んでください！ さて、演奏はあいかわらず充実していました。GINさんのギターと曲がどれだけ音楽的で、また、シオンさんの歌と語りとオリジナル曲の歌詞がどれだけ心に響くものであるのかについては、これまでに何度も書いてきていますので、ここではこの日ならではのことを書いておくと、まず、夏の間に（おのおののソロ活動としてではなく）ナカシオンとしてのCDの録音をめでたく完了したとのことで、記録に残す最良のパフォーマンスを実現するためのプロセスを経てきたことにより、前回より明らかに洗練された演奏が冴えわたっていました。新CDの制作にかかわる裏話もたくさん聴かせてもらいましたが、笑えるエピソードのほかに、お二人がこの作品集をかたちにするために並々ならぬ情熱を注ぎ込んだんだなぁとひしひしと感じるところがあり、発売される日が大いに期待されました。 ちなみに、今日のMCトークによれば、10月7日に新CDの製品が工場からアーティストの手元に届く予定だとのことですので、今月中にリリースされることになると思われます。 トークでは、GINさんがギター演奏技術＆音作り、音響コントロールに対して、あくなき探究を続けていることが話題になり、話の流れでは「凝り性」ということで笑い半分のネタということだったのですが、個人的には、GINさんの、最高の演奏を実現することに対する妥協のない姿勢に音楽家としての（自分自身に対する）厳しさを、ずっしりとした重みをもって感じるところがあり、感嘆しました。 ちなみに、ライブの休憩時間に隣に座っていた方（この日初めて会った見知らぬ方）とお話をしたのですが、フルートを演奏するというその方は、GINさんの伴奏で自分も演奏したいと話していました。GINさんのギター伴奏のすばらしさについては以前の記事でも書いたところですが、同じ感想を持っている人と出会えてうれしかったです。おそらく、ギター以外の楽器を演奏したり楽しんだりしている人がGINさんの演奏を聴くと、その魅力をギタリスト以上に強く感じるんでしょうね。しかしそれも、GINさんの日ごろのたゆまぬ精進あってのこと、ということが今日のトークであらためて明らかになったのでした。 ナカシオンの名曲のなかで、私が今日ぜひ聴きたいと思っていた「横顔」、第二部の最後近くになって聴くことができました。あー、よかったぁ。目の前で演奏するのを聴くと感動もひとしおですな。終演後にシオンさんに訊いたところでは、先輩アーティスト（ってか、大御所クラス）でも、この曲を愛聴してくれている人たちがたくさんいるとのこと。宜乎。まだYouTubeにゴロンと置かれているのをなんとか（悪い音質で）ダウンロードすることぐらいしかできないというのに、作品の持つ力というのはすごいものがありますね。 実は、「横顔」に並ぶ名曲だと思っている曲がもう一つあるのですが、それは今日は演奏されませんでした。これは、近いうちにまた聴きに来いという運命の思し召しだと思って、CD発売後にできるだけ早く、演奏会場に足を運びたいものだと思います。 ダブルヘッダーで聴きに行った甲斐のある、音楽もお話も中身の濃い、秋の夜更けでした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の10月2日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.09.24（土）	津山国際音楽祭　４人の若手ピアニストによるピアノの饗宴　出演：杉目奈央子、谷口博章、鳥越由美、福田ひかり　ベルフォーレ津山　開場13：30　開演14：00　一般1,000円、学生500円（全席自由）
	→谷口博章さんが出身地の津山の音楽祭に招かれてご出演。他の３人も津山にゆかりのある方たちだとのことです。演奏予定曲目は、 ・シューマン：謝肉祭（杉目 奈央子） ・リスト：コンソレーション 第３番、ワーグナー＝リスト：イゾルデの愛の死、ほか（谷口 博章） ・シューマン：交響的練習曲（鳥越 由美） ・J・S・バッハ：パルティータ 第２番 ハ短調 作品８２６（福田 ひかり） 詳細は「第８回津山国際音楽祭」のWebサイトを参照してください。
2011.09.11（日）	神戸花鳥園 花園コンサート 出演：橋本久美子(Hr.)、白鷹里衣子(Pf.) 　神戸花鳥園（神戸市中央区港島南町7-1-9）特設会場　①12：00、②14：00　各ステージ約30分
	→ホルンとピアノの演奏会です。前提として、花鳥園への入場（大人1,500円）が必要ですのでお忘れなく。演奏予定曲目や以下の通り。 海沼　実 ：里の秋 ビゼー ：歌劇「カルメン」より　ハバネラ ピアソラ ：リベルタンゴ ファリャ ：「恋は魔術師」　より　火祭りの踊り リスト ：愛の夢　第３番 カーペンターズ ：トップ・オブ・ザ・ワールト マスカーニ ：歌劇「カバレリアルスティカーナ」より　間奏曲 メンデルスゾーン=シュテックメスト ：歌の翼による幻想曲
2011.09.10（土）	MOON STONES special Duo session　=ピアノとヴァイオリンによるデュオ=　出演：馬渕清香（Vn.)　宮本聖子（Pf.）　豊中市立ローズ文化ホール　開演18：00　3,000円
	→本年（2011年）５月に初共演したお二人が結成したデュオ。誕生日が同じで気が合うそうです。演奏予定曲目は以下の通り。 ・バルトーク：ルーマニア民族舞曲 ・ミヨー：シネマ･ファンタジー「屋根の上の牛」 ・ラヴェル：ヴァイオリンソナタ ・ベートーヴェン：クロイツェルソナタ
鑑賞メモ：	MOON STONES （Pf．宮本聖子さん、Vn．馬渕清香さん）　Duo結成記念演奏会を聴いてきました。（9月10日）　　 昨年12月に芸文の神戸女学院小ホールで拝聴して以来、９か月ぶりに宮本聖子さんのピアノ演奏をたっぷりと聴く機会が巡ってきました。この演奏会があることを知ったのは８月も末になってからだったのですが、以前にもどこかで書いたように、運命の神様というのはいるもので、この演奏会のために何か月も前からスケジュールを空けていたかのように、何の支障もなく聴きに行くことができたことは、大いなる幸運でした。 デュオの名前「MOON STONES」は、誕生石に由来するそうです。いわく、お二人は偶然にも誕生日が同じで、音楽に対する向き合い方でも共感するところがあり、意気投合してこのたびデュオを結成したということです。 この日、豊中のローズ文化ホールに集まった聴衆は、馬渕さんの言葉を借りると、デュオ結成の「証人」となったわけなのですが、その演奏は「証人」と呼ばれることをこの上ない誇りに思うことのできる、すばらしいものでした。 「オレはなぁ、MOON STONES の結成コンサート聴きに行ってたんやぞ～」 と、のちになって自慢をすることのできる、絶対に忘れることのできない、記憶の中に永遠に陰翳深く残っていくにちがいない演奏会でした。 演奏された曲目は、 １．バルトーク：ルーマニア民族舞曲 ２．ミヨー：シネマ・ファンタジー『屋根の上の牛』Op.58a ３．ラヴェル：ヴァイオリンソナタ （休憩） ４．ベートーヴェン：ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第９番『クロイツェル』 でした。 12月もそうでしたが、今回も屋根全開で演奏された宮本ピアノは、神戸芸術センターの第２回コンクール本選で初めて（エントリーナンバーのみで名前も知らずに）聴いた時に猛烈に感動して、「この人が入賞しなければグレてやる」とどこかに書いた、ほれぼれとする音色を聴かせてくれる演奏技術と、それにのせて作品に込められた想いがひしひしと、あるいはビシビシと伝わってくる生々しい表現力に、今日もまた満ち満ちていました。ヴァイオリンとピアノ、というと脊髄反射的に「ピアノは伴奏」と思われる方もあるかもしれませんが、そういう先入観を持つことは大いなる間違いで、まさに「Duo」。ヴァイオリンとピアノが不即不離・不一不異の関係で作品の世界を鮮やかに描き切るのがこの MOON STONES の演奏だと感じました。 で、そのヴァイオリン。実は（恥ずかしながら）馬渕清香（まぶち・さやか）さんの演奏を聴いたのはこの日が初めてだったのですが、この日の演奏会を聴いただけで、もう完全に「馬渕さんの音」という範疇が脳内で確立しました。たぶんこれからは、ブラインドで聴いてもわかると思います。まるで生身の声楽家が歌っている声のように生命感があふれるヴァイオリンの「声」は、高音部から最高音部にかけても、どこまでも音色に艶があって美しく、そしてただ美しいだけではなくて、作品の心を語る音としての存在感をしっかりとたたえたもので、私が以前に高価なチケットを手に入れて聴いたことのあるクァルテット（マスコミ的知名度高し）のヴァイオリンの演奏が、なんだか普通のありきたりに思えてしまうような、何の予備知識もなく聴いて、ただその音だけで聴き手が虜になってしまう演奏でした。 休憩後の第二部。いわゆる「クロイツェル・ソナタ」、すごかったです。場所柄、客席には音大関係のと～っても専門家な人たち（シロウトの私の何百倍もこういう音楽に接していると思わる人たち）が少なからずいらっしゃった様子だったのですが、その人たちがもう身じろぎもしないで聴き入っていましたねぇ。まあ、内心私は、「この演奏を聴いて心が動かないヤツは、相当なヒネクレ者かホンマに音楽がわからんヤツかのどっちかやろ」（^^;)と思いながら聴いていたのですが。 プログラムされていた最後の曲、後半全部をこれにあてた大曲の最後の音が空間に溶け込んだ後は、もちろん、大きな拍手が沸き起こりアンコールへ。 前後しますが、この演奏会は、ひたすら曲を演奏し続けるわけではなく、宮本さんと馬渕さんが交互にマイクを握って、曲にまつわる解説やエピソードを紹介しつつ、チラシにあったように「アットホーム」な雰囲気で和やかに進行してきたのですが、アンコールの冒頭でもお二人のトークが入り、１曲目の前には宮本さんがデュオの名前の由来を説き、２曲目の前には馬渕さんから、かの「証人」のご発言がありました。 En.1　フォーレ：月の光 En.2　ドビュッシー：月の光 弱奏の極みともいえる、思わず呼吸を忘れてしまうような微細な音色と響きで奏でられた、月にまつわる二つの曲は、この日の演奏会の感動をそっと心の引き出しの中に収め、永遠に息づかせてゆく、みちびきのしらべであるかのようでした。 演奏会の最後の最後に舞台に出てこられたお二人は、がっちりと握手をしたあと、客席にあらためて一礼。Duo 結成記念の演奏会は、すばらしい充実感の中で終演しました。 演奏会終了後にホールから退出すると、なんと！　少し目を上げたところに中秋の名月を控えた、21時で月齢12.4の月が、ぽっかりと浮かんでいました。演奏会の余韻は会場からの帰路にまで続きました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の9月14日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。ただし、テキストのみで写真は含まれていません。）
2011.08.26（金）	シューベルト「冬の旅」”周遊”シリーズ　シューベルトの歌曲集「冬の旅の世界を寄り道しながら少しずつのぞいてみませんか？　うた・おはなし：廣澤敦子　ピアノ：出光世利子　世良美術館　開演14：00　1,500円
	→シューベルトの「冬の旅」全24曲を月１回、半年間かけて歌っていく連続演奏会の第1回。会場は下記にすでに２回記録が残っているなじみの場所。精密な合唱や繊細なピアニシモを余すところなく伝える響きを持った空間で、今度はどんなすばらしい音楽に出会えるか、期待大です。
鑑賞メモ：
2011.08.20（土）	２nd SIMKRAC　（神戸外国人クラブ主催　東日本大震災チャリティーコンサート）　出演：田中正也、クロード・チアリ、他　神戸芸術センター芸術劇場　開場16：30 開演17：00　前売り：3,000円、当日：3,500円
	→詳細および最新情報は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.08.13（土）	混声合唱団Parsley 第16回定期演奏会　賛助出演：兵庫県立香寺高校合唱部　ピアノ：竹田景子　東灘区民センター うはらホール（兵庫県神戸市）　開場13：30 開演14：00　入場無料
	→1993年に設立された一般合唱団の定期演奏会。以下のプログラムが予定されています。 第１ステージ イギリス作曲家集 第２ステージ 兵庫県立香寺高校合唱部賛助出演 第３ステージ　Spirituals 第４ステージ　千原英喜作品集 ソリストとしてのみならず、声楽・合唱の伴奏者としても大きな実績のある竹田景子さんが第3、第4ステージで伴奏を担当する予定です。
鑑賞メモ：
2011.08.02（火）	Concert melange （コンセール・メランジュ） 出演：井上美和、竹田景子ほか　兵庫県立芸術文化センター　神戸女学院 小ホール　開場18：00 開演18：30　2,500円（全席自由）
	→昨年はフランクの「前奏曲、コラールとフーガ」でご自身の表現を果敢に追求する、とても印象深い演奏を聴かせてくれた竹田景子さん。今年はブラームス作品（ピアノのための６つの小品 作品118）を演奏されます。昨年初めて拝聴して感銘を受けたフルートの宗本舞さんも再びのご出演。ダマーズの「演奏会用ソナタ」がプログラムされています。
鑑賞メモ：	2011年夏の「コンセール・メランジュ」を聴いてきました。（8月2日）　　 昨年の夏に引き続き聴きに行きました。（この演奏会シリーズそのものは、冬にも開催しています。）平日の夜でしたが、会場の芸文・神戸女学院小ホールは舞台の背後の席以外はほとんどお客さんで埋まるくらいの盛況でした。 人気の秘密はプログラム構成の巧みさだと思います。これから知名度を上げていこうという若手から、すでにある程度のキャリアと知名度のある音楽家さんたちが、さまざまな楽器（声楽含む）で多彩な音楽を聴かせてくれます。今回はマリンバの演奏があり、私はソロ演奏を聴くのが初めてだったので、事前の期待は大きなものがありました。 さてその演奏会、最初に気付いたのは、伴奏のピアノの屋根が全開になっていたこと。私がよく参加しているピアノセミナーでは、講師の調律師さんが以前からずっと力説してきたことなのですが、屋根を閉じてもピアノ全体から発せられる音の大きさは変わらず（計器を使って科学的に測定した結果だそうです）、音がこもって自分の音が聴こえにくくなる分だけ「弾きすぎ」になってしまい、むしろ逆効果だというのです。調律師さんたちの「啓蒙活動」の成果かどうかわかりませんが、今日の演奏会で屋根を閉じて伴奏をする人は一人もありませんでした。 さて、９組が出演した今回の演奏会で私の印象に残ったのは、まずはマリンバです。音楽ホールで聴くマリンバの音は、ものすごい存在感があって、ホール全体を楽器のように震わせました。とくに低音はピアノ以上に音が太く、会場内の空気の密度が上昇したかのような音圧を感じました。そして、自分の手に直接マレットを持って楽器を鳴らしているので、アクションを介してハンマーで弦を打つピアノにはない、生々しく、そして繊細な音の表情がとても印象的でした。（マリンバ：金鹿千紘さん、ピアノ伴奏：小合麻里奈さん） 今日の演奏会を聴きに行った主目的は、ブラームスの「ピアノのための６つの小品 作品118」を聴くことでした。一人に割り当てられた時間の都合で、全６曲を演奏することはできず、４曲に短縮されていたのですが、その選曲がまずもってすばらしかった。普通は、最後に第６曲を持ってくるように思えるのですが、今回の演奏では、１，２，３，５と演奏されたのです。で、この並びで聴くと、１～６を通して聴くのに勝るとも劣らぬまとまりの良さがあり、感心してしまいました。あえて最後まで語りつくさず、おだやかでしっとりとした情感があふれる曲ですうっと終わるところに深い余韻をひいて、なんというかピアニストの美意識のようなものが表れているような気がしました。 さて、演奏された４曲についてですが、全体の印象は、とてもきめ細やかに端正に織り上げられているなぁ、というものでした。それは、たんに細部まで行き届いているというだけでなく、演奏中のホール空間が、空気感が、完全にブラームスの世界になっていて、会場の誰もがピアニストの紡ぎだす音にぐーっとひき込まれていており、鳥肌が立つような聴衆の気持ちの集中がありました。細かいところでは、バッハを得意とするピアニストさんだけあって、対位旋律の横糸の描写がとても明瞭で、織物的な質感が感じられるものでした。第５曲「Romanze」最後の「piu espressivo」の部分、思わず涙が出そうになってしまい、深い感銘を覚えました。今年も聴きにきて本当によかった、と思う瞬間でした。（ピアノ：竹田景子さん） 続いては声楽で、モーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』より２曲、「愛の神様、慰めの手を」と「喜びの美しい時はどこへ」でした。チラシでは、ブリテンの作品（「この島国で」）が予定されていたのですが、変更になっていました。じつはこの変更には、私自身としては助かったような気もしました。予習の時にCDに付属していた演奏者自身による対訳を読んでいたら、「なんでこの（英語の）詩が、この和訳になるの？」と思うところがいくつも出てきて、煮え切らないまま今日の演奏会に臨んでいたからです。 さて、このモーツアルト作品で初めてその声を拝聴したソプラノさんは、（あとで知人にきいたら「周知の事実や」とあきれられましたが）すばらしい声の持ち主で、上記の事情でとくに予習をすることなく聴いたわけだけれど、何の説明を加える必要もない、高い芸術性が際立つもので、ホール全体と共鳴する豊かな声と、安定した長い息、そして細やかな感情表現で、舞台の上には歌い手とピアノ伴奏者しかいないのに、オペラの舞台の情景が色鮮やかに描き出されました。クライマックス部分で高音域にクレッシェンドしていくときの力強さがもう並みではなく、陶酔してしまいました。最後の音がホールに溶け込んでいった後には、客席から「ブラボー」の声が上がるのが聴こえました。（ソプラノ：平野雅世さん、ピアノ伴奏：殿護弘美さん） 今日の演奏会の最後は、フルート独奏でした。これはしっかりと予習していた曲。現代曲ですが、とても楽しく聴けるすばらしい作品。前回このフルーティストの演奏で聴いたムーケの「パンの笛」はすでに私のお気に入りの曲になっていますが、この曲もそうなりそうです。ダマーズ作曲の「演奏会用ソナタ」、味もそっけもない曲名ですが、楽曲そのものは、親しみのある明快なメロディーが次々と（８つの楽章で）展開していき、気持ちが昂揚していきます。 プレリュード、ゆったりとしたテンポで入ってたっぷりと歌う演奏。前回もそうでしたが、笛一本でこの表現力。すごいです。一気に、このフルーティストの世界になりました。とくに、8つの楽章のうちに２回でてくるアリアの部分は、さらにテンポを落としてとても丸くてきれいな音でしっとりとうたい、またピアノ伴奏の音色や溶け合い方もすばらしく、感動スイッチが入りました。対照的に、やはり現代曲だけあって、ところどころに特殊奏法的なアクセントも効いていて、面白味もありました。リゴードン（第2楽章相当）に出てくる「ポフ！ポフ！ポフ！」という音がやけに記憶に残っています。最後のジーグでは、軽快に爽快に疾走して、楽しげな空気の中でストンと終わり、この曲の終わりであるとともに、今日の演奏会の終わりである瞬間を、明るく印象づけました。（フルート：宗本舞さん、ピアノ伴奏：齋藤純恵さん） いや～、コンセール・メランジュ、今回もすばらしかったです。その名の通り「混合演奏会」（和訳すると雰囲気ないなー）ですので、なかには難しい曲があったとしても、出演者の誰かの演奏に必ず心が動くに違いありません。今後も継続されるに違いないこの演奏会、平日開催のことが多いですが、聴きに行く価値は大いにあると思います。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の8月3日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.07.24（日）	佐藤卓史 × 田中正也　超絶プレミアムデュオが贈る ♪楽しいおしゃべりコンサート♪　宗次ホール（名古屋）　開演13：30　2,000円
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	宗次ホールで「佐藤卓史さん×田中正也さん」を聴いてきました。(7月24日） 直前まで本当に行けるかどうかわからなかった名古屋でのジョイントコンサートですが、なんとか聴きに行くことができました、というか力業で聴きに行きました。日曜までにやるべきことを土曜日までに押し込んで、日曜の朝にチケットの取り置きをお願いして、13時開場の演奏会に10時すぎに家を出て新幹線で移動。幸いにも、演奏会終了後には数時間、会場近辺とJR名古屋駅前を地理を覚える程度に放浪する（またこのパターン）時間も作ることができ、往復の交通費を有効に使うことができました。 ところで、こうまでしてこの演奏会を聴きに行きたかった理由は、もちろん出演する二人が日本の枠を超えたトップレベルのピアニストであるということもあるのですが、それと同じくらい大きかったのが、会場が宗次ホールだったということ。近年、クラシック音楽の演奏会場としてものすごく評価が高い名古屋のホールの音を、ぜひ聴いてみたいと以前から思っていたのです。 宗次ホールは、名古屋駅から地下鉄で二駅目の栄にあり、駅を下車してほんの少し歩くだけで到着する交通至便な施設です。関西のホールの感覚で言うならば、大阪城公園駅といずみホールぐらいの距離感です（ただし、栄で歩くのは街中ですが）。 このホールは、カレーのCoCo壱番屋の創業者である宗次徳二さんが私財をなげうって建設した約300席のクラシック（アコースティック）専用のホールで、高く評価されている点の一つ（にして音楽ホールとして最大の美点）に「響きがとても良い」ということがあります。以前の拙ブログ記事にも書いたように、私は残響の質についてはけっこうこだわりがあるほうなので、一流のピアニストの奏でる音でそれが体感できるとなると、これ以上の機会はないと思いました。 さて、とくに迷うこともなくホールに到着すると、玄関前で客を迎えている一人の男性がいました。後で知ったことですが、オーナーの宗次さんはコンサート開催時には自らが玄関に立って客を迎え入れているということでしたので、この人が宗次オーナーだったに違いありません。 館内に入って１階の受付で電話予約をしていたチケットを受け取ったのですが、この時の対応がなんかとてもよい。事務的ではない柔らかい人あたりで、しかも対応は的確でそつがないがない。これはこのあと出会ったすべてのスタッフに共通していました。演奏会終了後の話になるけれども、帰り際に「大阪から聴きに来たんですー」なんて言うと、「迷わずにお越しになれましたか」「初めてでしたら栄のこのあたりをご覧になってお帰りになってはいかがですか」といった、もてなしの心に溢れた言葉が自然に出てくるのですな。食堂業で成功を収めたオーナーの経営理念がスタッフ全員に染みわたっていると感じました。関西でもレセプショニストの存在が印象的なホールがいくつかあるけれども、過去の経験に照らしてみると、決まった仕事はクールにこなせても個々に人間味のある対応のできるスタッフがここ（宗次ホール）ほど粒ぞろいでそろっているホールはないと思います。このホールの評価が高い理由は、たんに施設が立派であることだけではないのだと思いました。 肝心の演奏会について書かなくてはなりません。 追記：→田中正也さんの公式Webサイト内、「まさや通信９月号」から、当日の演奏を収録したYouTubeの動画を視聴することができます。 じつは、この演奏会の少し前（５月中旬）に、二人は偶然同じコンクールの異なる部門にエントリーし、それぞれが最高位を受賞していたのです。そのコンクールというのは、イタリアで行われた第21回カントゥ国際ピアノコンクール。このコンクールの特徴、というか独特の点は、ピアノコンチェルトだけで審査されることで、クラシック部門とロマンティック部門の二つに分かれており、佐藤さんはクラシック部門、田中さんはロマンティック部門で１位となったのでした。 この日のコンサートのＭＣトークにいわく、この日の演奏会はカントゥで最高位を分け合った二人による（記念すべき）「お披露目の第一回」とのことでした。（この言葉に聴衆どっと沸く。） 演奏された曲目は、まず最初に２台のピアノで「アルメニア狂詩曲」でした。初めて聴く宗次ホールの音はどんなものか、期待に胸を躍らせながら神経を集中させました。…が、すでに音楽を聴く前にこのホールの響きの質が尋常ではないことがわかりました。開演して二人が入場してきた時の拍手です。こんな響き方をする拍手、これまでに聴いたことがない！ さて、曲は冒頭、深々とした低音の揺蕩うような旋律から始まって高音部が歌い始めるのですが、ゆったりとしたテンポで比較的にシンプルに音符が並んでいる個所でありながら、身体全体が音に包みこまれるような感覚があり、「いや～、これは気持ちいいなぁ」と思わず心の中でつぶやいてしまいました。 次第に曲はリズミカルになり、2台のピアノが奏でる音が共鳴し、どんどん昂揚していきます。民族音楽を基礎にした曲ということもあり、聴き手の心にまっすぐに響いてきて、クライマックス部分では、演奏会の１曲目からしてすでに鳥肌が立つような感動を覚えました。「はるばる名古屋まで来た甲斐があったワ」と早くも満足したのでありました。 このあと、二人のＭＣトークが入りました。長く日本を離れて日本の音楽事情にうとくなっていた田中さんが佐藤さんに初めて出会った時のエピソードは相当面白かったですが、知りたい人はぜひ今後も継続される二人のコンサートを聴きに行って確かめてください。 このあと、コンサートの前半はそれぞれがソロで演奏をしました。 まずは田中さんがリストの「スペイン狂詩曲」。事前の予想を良い意味で大きく裏切る演奏にびっくりしました。ひとことで言えば、ものすごく重厚な響きで、スタインウェイD-274の地の底から湧き上がってくるような太くて力強い音に圧倒されました。他方で、中間部の蝶が舞うような旋律の部分は高音部の煌めき方もまたこの上なく美しく、それはメッキのような安っぽい輝きではなく、貴金属のような深みのある輝きがありました。 私はこれまでに、もっと軽くて跳ねる感じの「スペイン狂詩曲」しか聴いたことがなかったので、全曲聴き終わった後にまるで別の曲を聴いたかのような気持ちになっていました。曲全体を通じて、一つ一つの音のもつ質量とでもいうべきものがぜんぜん違いました。 続いて佐藤さんのソロ演奏。ショパンの「幻想即興曲」、メンデルスゾーンの「狩りの歌」、シャミナードの「昔」、ラフマニノフの「絵画的練習曲（音の絵）39-9」でした。初めて聴いた佐藤さんのソロは、各所で「完璧」と称賛されるテクニックを目の当たりにして、「ほんとうにすごいなぁ！」と感嘆した以上に、それぞれの曲に、佐藤さんならではの息遣いがあり、それぞれの曲の描こうとしているものが明瞭であったところが強く印象に残りました。 個人的に一番心に残ったのは「狩りの歌」。獲物を仕留めることに血をたぎらせる狩りというよりは、自然の恵みを分かち合う、ある種の敬虔さを感じる営みの一つとしての狩り、という感じで、やさしく空間の上へ上へと抜けていくふくらみのある響きが印象的でした。 「昔」では、すばらしい弱奏が印象に残りました。大切な思い出を慈しむような、しっとりとして繊細な肌触りの音、そして息遣い。 「音の絵39-9」では一転して、冒頭の密度が高く心を直接つかんで揺さぶるような音に背筋がゾクゾクし、曲末もまた強奏でたたみかけてくるのですが、中間部で弱奏された中低域の和音のふくよかな響きも、やはり強く心に残りました。 休憩をはさんでの後半は、２台のピアノでいよいよ二人のデュオでした。いきなり演奏には入らず、二人ともステージに登場しての楽しいトーク。随所で客席の笑いを取りながら導入がなされました。「笑い」といっても基本的に舞台進行や楽曲に関わることなので、演奏会の雰囲気が演芸場になるようなものではありません。クラシックの音楽家として、このあたりの話題をいかにうまく展開できるかが、ファンの裾野を広げるうえでけっこう大事な素養になってくるのでしょうね。 後半一曲目はモーツァルトの「２台のピアノのためのソナタ K.448」でした。佐藤さんがカントゥで優勝した時に弾いた曲もモーツァルトでしたから、「スペシャリストにリードしてもらって楽しく弾きたい」と田中さん。 演奏が始まると、まずはとても楽しげにウキウキとした感じで弾く佐藤さんの姿に目がひかれました。そしてこれぞモーツァルトの音。「この音をしっかりと記憶にとどめておかねば！」と強く思いました。 すべての楽章を通して、二人の演奏は細部までタテの線がとてもよくそろっていて、かつ、シーケンサーのような無機質さを感じない、生々しい語り口と躍動感にあふれるものでした。クライマックス部分では、二人の音楽的昂揚のカーブがとてもよく一致していて、聴き手もまた気持ちよく頂点に上り詰めていくことができました。後になって、この演奏会の前に合宿までして練習をしたというエピソードを知るのですが、宜乎と思ったものです。 ２曲目はストラビンスキー＆バビンの「ペトルーシカより３つの断章」。この曲の前にもMCトークが入って、今度は佐藤さんが「ロシアの専門家の田中さんへ」と水を向けると、作曲家とこの作品についての簡潔にして内容の濃い解説があって、いよいよプログラム最後の曲が始まりました。 じつはこの曲は、昨年の７月に田中さんと吉永哲道さんのデュオで一度（初めて）聴いているのですが、その時会場となった自泉会館と宗次ホールは響きの質がまったく違い、新しいピアノと最新の技術で音響をとことんまで突き詰めたホールで聴く「ペトルーシカ」は、優劣の問題ではなく、味わいがまったく異なりました。 幻想的な弱奏からたたみかけてくるような強奏までものすごく豊かな表現力で迫ってくる、まさに劇的な（ちなみに「ペトルーシカ」はバレエ音楽）、この日のプログラムの最後を飾るのにふさわしい名演でした。とりわけ強く感じたのは、カントゥでオーケストラを相手にピアノを弾いて優勝したピアニストが二人でそろい踏みしているだけあり、音のもっている存在感に圧倒的なものがあり、最強奏部分ではめくるめく音の渦の中に巻き込まれて溺れてしまいそうな感覚さえおぼえました。そしてこの時の二人の弾き姿もまた、仮に映像だけだったとしてもわかるほど、力がみなぎるものでした。 演奏後には当然、アンコールを求める拍手が鳴りやみませんでした。 再登場した二人が演奏したのは、矢代秋雄「夢の舟」、そしてハチャトリアン「剣の舞」でした。この二曲は連弾（一台四手）でした。 １曲目は佐藤さんがプリモ、２曲目は田中さんがプリモ、と交代しての演奏。「夢の舟」でしっとりと心に染みる旋律をやさしく奏でたあとは、田中さんのコンサートではおなじみの「剣の舞」。超絶技巧の曲を難なく弾きこなすピアニストが連弾する「剣の舞」は、もはや言葉では表現のしようのない疾走感のあるものでした。ネットの動画でもこの曲の速弾きはけっこうアップされていますが、今日の演奏のすごいところは、テンポがぜんぜんふらつかないこと。最初だけ速くて途中で息切れしたり、フレーズによってギクシャクしたりすることがまったく無いのです。ホールの聴衆を驚嘆させて、この日の演奏会は完全に終了しました。 演奏終了後は、二人が舞台から客席の通路を通って退出するというおまけつき。それほど大きくないホールですから、すべてのお客さんが二人の姿を間近でみることができて、最後までうれしいプレゼントのある演奏会でした。 さて、演奏会終了後は、冒頭にも書いたように、初めて訪れる栄の街をしばらくぶらつきました。とても暑かったので、ともかく地下街を全部歩き尽くそうと思って中日ビルの地下から第一歩を踏み出したのですが、大阪の地下街とは全然雰囲気が違い、細い路地がさまざまな角度で入り組んでいるようなところがなく、地下であるにもかかわらず大きな通路がすべて直交していて、よく言えば整然としていてわかりやすい、悪く言えばだだっ広くて退屈な、地下街でした。（これは、名古屋駅西口の地下街も同じ。） そんな地下街を歩いているうちにたどり着いたのが「オアシス２１」という施設。サンクン・ガーデンのようになっていて、地上に吹き抜けているのですが、そこで上方に目をやると…。 なんじゃ、こりゃ。いったい何の施設なのかわけわからん。10年近く前に完成した施設なのだそうですが、関西にいてその存在をまったく知りませんでした。しかし、純粋に建築物として見ると高度な技術の粋を集めた近未来的な空間が生み出されていて、こういうのは他の地域では絶対に作れそうにないなぁ、と感嘆しました。名古屋を中心とする中京地域のパワーを象徴しているような気がしました。下に何枚かその写真を貼っておきます。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の7月25日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。ただし、テキストのみで写真は含まれていません。）
2011.07.24（日）	夏を彩るヴァイオリンとピアノの調べ　木村修子(Vn.) 吉久夏子(Pf.)　 吹田市立亥の子谷コミュニティセンター１階ロビー（電子ピアノによる演奏）　12：00～13：00　入場無料
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.07.09（土）	第44回ライブラリー・コンサート 老田裕子・谷口博章 「ソプラノとピアノの夕べ」 芦屋市立図書館エントランスホール 開場 18：30　開演 18：45　入場無料 主催：芦屋市立図書館「友の会」　後援：芦屋市教育委員会
	→ソプラノ老田裕子さん、ピアノ谷口博章さんご夫妻によるコンサートです。
	谷口博章さんと老田裕子さんを聴いてきました。 　 ７月９日、芦屋市立図書館エントランスホールで行われた、第44回ライブラリーコンサートでした。このコンサートは、阪神・淡路大震災を機に、被災した人たちの心を励ます「まちかどコンサート」として始まったもので、当初は数年で終える予定だったそうですが、震災後16年を経てなお継続している、ひろく市民に支持された演奏会なのです。 この日の演奏会について計画が立ったのは新年早々だったそうですが、３月には東日本での大震災が発生し、そこでの支援活動に谷口さん自身も公務として関わることになり、結果的に、被災地を結ぶ励ましの演奏会としての意義も持つようになりました。 梅雨明けで夏の晴天がまぶしい土曜日となったこの日、陽射しがようやく和らいだ芦屋浜には、開場時刻の６時半のずいぶん以前から長い列ができていました。予定時刻を少し繰り上げて開場した館内には、お客さんがどんどんやってきて、開演前には文字通り「立錐の余地なし」といった状況になっていました。 演奏は、定評のある谷口さんのトークに導かれ、ピアノソロと歌を交互に配して進行しました。ソロは、コンソレーション第２番と第３番（リスト）、ノクターン第２番と第13番（ショパン）でした。前二者は、もちろんリストが震災の慰めとして書いた曲ではないのだけれど、16年前の自らの体験と今回の被災地の状況を心に置いて聴くと深い感銘を覚えずにはいられませんでした。 後者のうち、ノクターン第２番は、過度にセンチメンタルにならない、風通しの良い、谷口さん独特の味わいのある演奏を、昨年の西宮でのリサイタル以来再び聴くことができました。第13番は、美しさだけでなく存在感のある音で、しっかりと描かれました。 老田さんの歌はもちろん、伴奏が谷口さん。これがなんと言っても一番の聴きものだったといえるでしょう。老田さんが他のピアニストの伴奏で演奏をすることは数限りなくあるでしょうが、（本業が公務員である）谷口さんの伴奏で歌うのはとても稀少なことなのです。逆に、谷口さんが他の歌い手さんの伴奏をすることはさらにありえないことなので、今日の演奏会を「谷口さんの伴奏」を聴くことができる機会だと考えると、繰り返しになるけれども、本当に希少な演奏会だったのです。 前半は、「あんこまパン」。林望作詞の楽しい曲です。じっさい、演奏の中で会場から笑いとどよめきが起こり（それが成功のしるし！）、聴衆がみんなニコニコ顔になっていました。しかし、音的にもなかなか本格的なもので、個人的には、第１楽章での速くて歯切れの良い響きや、ユニークな歌詞を表現する一風変わったフレーズなど、狭義のクラシックの域をこえた表現においても、谷口さんの演奏にはとても魅力的な音があるなぁ、と感じました。 後半は星野富弘の詩になかにしあかねが曲をつけた歌曲集「二番目に言いたいこと」。この歌曲においては詩がとても大切なのですが、そして、それはプログラムの付録として印刷もされていたのですが、演奏中に、印刷物を見なくても、この詩の一言一句まできちんと聴き取ることのできる歌唱がほんとうにすばらしかった。基本的に言葉の世界で世渡りをしているkumaは、音だけを聴いて、外国語であれば何語であるかが明瞭に分かり、母国語であるならば、微妙なレトリックも含めてきちんと聴き取れるような、口跡鮮やかな歌いまわしが、歌唱においては最も大切な要素ではないかと常々考えているのです。 お二人の演奏では、この詩・曲に対する解釈をすみずみまで突き詰めている感じがありました。歌と伴奏が混然一体となった表現がすばらしく、それはたんに楽曲の形式的な分析において齟齬がないということにとどまらず、楽曲から二人が同じ大切なものを読み取り、それをどう表現すべきかについて、大きな意味での方向性がピタリと一致している、記号情報ではなく意味情報を共有できているからこそ実現できる、歌とピアノ伴奏の完璧とも言える調和でした。谷口さんの伴奏には、ソロピアニストならではの、多彩かつ繊細な表現を極めたものがあったのですが、このゆるぎない共通理解を土台にしているので、それは決してピアニストの独走に陥ることなく、どこまでも歌に寄り添うものでした。 「二番目に言いたいこと」は、７曲構成でしたが、第４曲で会場の空気が大きく変わったような気がしました。大きな力を持った詩でした。言葉による表現の力をひしひしと感じた曲でした。その後は、すべての聴衆の気持ちがまるで一つに収斂したかのような状況になり、歌い手・伴奏者と聴衆との間で音を通じた深い深いコミュニケーションがそこに達成されました。 終曲後は会場から嵐のような拍手がわき上がり、皆が、今日ここで得られた深い音楽的感動に対する喜びをためらうことなく表現していました。そしてもちろん、応えてくれたアンコール。同じ星野・なかにし作品より「悲しみの意味」でした。 アンコール曲でさらに気持ちの高まった聴衆に対して、最後の１曲がプレゼントされました。ヘンデルの歌劇『リナルド』より、「私を泣かせてください」（アルミレーナのアリア）。マスメディア的には岡本知高が歌ったものが有名（テレビドラマのテーマ曲？として使われたので聞き覚えのある人も多いはず）ですが、老田さんの歌うアリアは、もう最高にすばらしく、イタリア語の歌詞とも相まって、オペラでゆるぎない存在感を発揮しているソプラノ歌手の精髄を存分に披露して、これで満足できなかったらもう何で満足できよう！と思えるコンサートの締めくくりでした。 本来音楽ホールではない簡素な会場で行われた１時間余りの演奏会は、本格的な会場での演奏会に勝るとも劣らぬ感動をのこして、幕が下りました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の7月10日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.06.26（日）	オフィス設計コンサート　田中正也　ピアノリサイタル 魔法のピアニッシモ　～エリーゼのためにから超絶技巧練習曲まで楽しいお話とともに～　オフィス設計ホール（東京六本木） 開演14：00 一般前売3,000円 当日3,500円
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.06.26（日）	高槻音楽家協会サロンコンサート 総合市民交流センター8Fホール （出演：山口郁子，吉久夏子）　開演14：30　無料
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	久しぶりに吉久夏子さんを聴いてきました。 6月26日＠高槻市立総合市民交流センターのサロンコンサートでした。 この日は梅雨の晴れ間…、というにはあまりにも強い日差しの夏空で、大阪の最高気温は猛暑日の基準となる35度寸前まで迫った、8月と言ってもいいような天気でした。 こんな日こそ、家で電気を使わないで公共施設にお出かけ、と節電のご時世にもかなったコンサート拝聴だったわけですが、吉久さんが山口郁子さんとの連弾で演奏したのは、ミヨーの「屋根の上の牛」。ブラジル音楽をベースにした曲で、奇しくも、今日の天候にぴったりでした。 この会場のピアノは、いちおうＧＰだけれども、小さい（たぶん最小サイズ）上に、なかなかピアニストの意のままにはならぬ曲者らしく、演奏には少なからぬご苦労があるようです（聴いているだけでも、ある程度はわかる）。 そんなピアノを相手に、吉久・山口デュオが４手で奏でた音は、リズミカルでありながら、響きがきれいに・気持ちよくつながって行き、なおかつ、畳みかけてくるようなところでも音がダンゴになって唸るようなことがなく、ソロの２倍の手と指が鍵盤を同時に押さえているということを感じさせない、音に厚みがあるのにとてもスッキリと聴けるものでした。 それにしても、ロシアピアニズムの系譜につらなる吉久さんが、ラテンのノリで演奏するのを拝聴する機会が来るとは想像もしていませんでした。広い意味でのロンド形式でリフレインされるメロディーは、どんどん転調するのに加えて、まるでスチールドラムを叩いているような不思議な浮遊感のある響きがあって、ピアノがラテン楽器の仲間入りをしたような感じでした。山口さんもプロフィールを拝見すると寒冷ヨーロッパ系のピアニズムで薫陶を受けたような感じです。にもかかわらず、息もぴったりにブラジル音楽。いや～、お二人とも懐が深いですねぇ。 このサロンコンサートは合計４組が出演したのですが、終演後にはロビーで出演者さんたちにお目にかかる機会がありました。久しぶりにリアルで再会した吉久さんには、今後の（確定はしていない）ご予定などをチラリと教えていただき、期待が膨らみました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の6月26日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.05.28（土）	イグナツ・リシェツキ ピアノリサイタル （東日本大震災チャリティーコンサート）　 SAYAKAホール（大阪府狭山市文化会館小ホール）　開場13：00　開演14：00　一般 2,500円　学生 1,500円
	→ポーランド・ポズナニ出身のピアニスト、リシェツキ（Ignacy Lisiecki）の大阪公演があります。e135Webサイトなどですでに何度もご紹介していますが、ポーランド国立ワルシャワ音楽院（ショパン音楽大学）を修了し、ドイツのハノーファ音楽演劇大学ソリストディプロマコースに進み、最近はヨーロッパでＣＤの録音をした（リリース日は未定）、大きな芸術的存在感のある、一度聴いたら忘れることのできない演奏をするピアニストです。たとえば、昨年の3月28日に聴いたショパンのピアノ・ソナタ第3番。個人的には、リシェツキを聴いて以降、3番を聴いてちょっとやそっとで感動できなくなってしまいました。その印象があまりに強烈で、もう、何日たっても、何か月たっても忘れられないのです。 　参考：→2010年3月大阪公演の鑑賞日記へ 今回は、東日本大震災のチャリティーも兼ねての演奏会となっています。以前より日本と縁の深いポーランドの俊英ピアニストの演奏会は、掛け値なしにおすすめです。 公式チラシの取り込み画像pdfへ
鑑賞メモ：
2011.05.14（土）	室内楽の楽しみＩＩＩ　弦楽三重奏と共に　Vn.松田淳一　Va.植田延江　Vc.日野俊介　（その他の出演者：田仲真弓、白原理香、ほか）　貝塚市コスモシアター 中ホール 18：00開場 18：30開演　1,000円
	→大阪南部の貝塚市で「室内楽の楽しみIII　弦楽三重奏と共に」という演奏会があります。表題は「室内楽」となっていますが、歌ものもある多彩なプログラムです。 e135Webサイトで紹介させていただいている白原理香さんは、（２月に自泉会館で演奏会があった）アンサンブルフェリーチェのソプラノ田仲真弓さんのピアノ伴奏で出演されます。 お時間のある方は、週末には雨も上がって気持ちのよい晴天になるに違いない（＾＾；）五月の夕べを、美しい響きの音楽で楽しまれてはいかがでしょうか。 →公式チラシの取り込み画像pdfへ
鑑賞メモ：
2011.05.08（日）	第11回神戸新開地音楽祭2日目 （クラシックステージに谷口博章さんがご出演になります。） 音楽祭そのものは、湊川公園と新開地商店街一帯を会場として12：00から20：00まで中断なく開催されますが、クラシックステージの会場は神戸アートビレッジセンター２Ｆホールです。13：30開始の第1部と15：30開始の第2部があり、それぞれ定員150名。先着順・完全入替制、運営協力金100円以上、となっています。谷口さんは第2部の最初にご出演になり、演奏予定時間は30分です。
	→新聞やテレビで何度も報道されていましたが、西宮市役所の職員として4月末まで宮城県南三陸町に派遣され、東日本大震災の支援業務（広報関連）を行ってきた谷口さんが、帰任して初めての演奏会となります。
鑑賞メモ：
2011.04.30（土）	ナカシオン ワンマンライブ　甲子園口 Live & bar Uncle Jam （西宮市甲子園口3丁目15-9 秋津州ビル1F　0798-64-5405　JR甲子園口駅下車 徒歩３分 ） 開場 19：00　 開演 20：00　テーブルチャージ500円＋投げ銭（飲食代別）
	→ナカシオンの世界を堪能できるワンマンライブ。ジョイントライブでは時間の制約上プログラムできない曲たちをたっぷりと聴けるはずです。会場は交通至便のロケーションなので、遅くなっても安心。
鑑賞メモ：	ナカシオン＠甲子園口 Uncle Jam を聴いてきました。（4月30日）　 自泉会館の翌日は、三連休だというのに昼間には「お持ち帰り」仕事に真面目にいそしんで、区切りのついた夜に、甲子園口まで出かけました。先月のはじめにライブの動画をこのブログでみなさんに紹介しましたが、私自身、しばらくナカシオンさんとはご無沙汰だったので、そろそろ聴きに行きたいなぁー、と思っていたのです。そしてＷｅｂでスケジュールを確認すると、自宅からの交通至便なところでワンマンライブ。今までに訪れたことのない会場でしたが、まあそれも一興と思い、ちょっとワクワクしながら出かけました。 ＪＲ甲子園口駅には、普通電車しか停車しないとはいえ、予想を大幅に上回る短時間で到着し、開演にはまだ１時間以上ある状態だったので、どこでもそうするように、あてどなく、自分の嗅覚だけで街を歩きました。すると、この小さな駅から始まる街が、商店街が、とても活気があってびっくりしてしまいました。アーケードのある商店街は週末の夜７時だというのに多くの店がにぎやかに営業中。個人経営の小洒落た飲食店にはどの店にもお客さんが入っていて、楽しそうな笑顔が咲いていました。もちろん物販の店もたくさんあり、昭和初期ぐらいから商いをしていると思われるような年季の入ったお店も、日が暮れてなお店を開いていました。 商店街の中で難なく見つけた会場の「Live & Bar Uncle Jam」、とてもこぎれいな店構えで、店先には見やすいLive告知のボードがセンス良く出ていて情報発信も完璧だし、重厚な木枠と大きなガラスの扉を開けて中に入ると、笑顔がやさしいマスターが迎えてくれて、まるでなじみの店であるかのような気持ちになり、初めて店に入る緊張感が一瞬にして解けました。 店内は手前が本格的なバーカウンターで、奥がステージと客席。この手の店（Live&Bar）というのは、なんとなく息苦しさや圧迫感を感じるところもあるのですが、ここは全然違いました。設計の妙なのか、そもそも床面積に余裕があるからなのか、一瞬にして「この店はくつろげるなぁ～」と感じてしまう魅力がありました。 さて、定刻より少しだけ遅れて始まったナカシオンのライブ、途中休憩をはさんで約2時間半、カヴァーあり、オリジナルあり、ギターソロありの16曲をたっぷりと聴きました。そして、お酒も入る　Live だからこその曲間トーク。ファンのみんなが期待している？「痴話喧嘩トーク」が今日も絶好調で、かみ合っているのかかみ合っていないのかわからない揚げ足取りの応酬がとても面白く、というか、第三者的にはもう仲が良すぎて、動画の石井完治さんの言葉じゃないけど、「あとはもう若いもんにまかせて…」と思わず口にしそうになりました。（＾＾；) さて、肝心の演奏ですが、看板ともいえる名曲はもちろん、すでにある曲で初めて聴く曲、しばらくご無沙汰しているうちにできあがった曲もあり、新しい感動との出会いがいくつもありました。 第一部2曲目の「ピアス」。そんじょそこらのJ-POPアーティストには絶対に書けない、繊細に揺れる気持ちと矜持とがきれいに柔らかく織り上げられた歌詞がとても印象的で、今後、アルバムにぜひ収録してもらいたいなぁ、と思いました。同様に、第二部の5曲目の「終止符」も、レトリックの素晴らしい深い歌詞でした。オリジナル曲の歌詞は基本的にシオンさんが書いているそうだけれど、聴き手にある受け取り方のみを強いるような単調さがなく、かといって「結局何が言いたいの？」という空虚な言葉の羅列でもない、大人が聴くに堪えうる良い歌詞だなぁーと、毎回思います。 ＧＩＮさんのギターは、今回初めて聴いたかもしれないギターソロの（少し季節を先取りした）「あじさい」が素晴らしかった。梅雨空のしっとりとした空気のもとに咲く花の色の、微妙に移ろいゆく様が目に浮かびました。伴奏では、相変わらず、粒のそろったきれいに響く和音がすばらしく、またそれを生み出す右手のフィンガリングが、ほんとうに手と指だけを見ていてもため息が出るくらい美しかったです。美しい音はそれを奏でる手もまた美しいものだなぁ、と今回かなり近くから演奏を拝見してあらためて思いました。 終演後に客席でお二人とお話をさせていただいたときには、驚くべきことがありました。それは「質の良い残響」についての話で、ライブ中のトークでは、それを求めてシオンさんのヴォーカルマイクにも、普通は使わない本来ギター用の機材をあえて使っているという話がありました。それで、終演後に、どういう残響を求めてその機材を選んでいるのか、ということになり、そこで出てきたＧＩＮさんの言葉。 私が23日に聞きに行ったピアノセミナーの講師（ある意味で日本を代表するピアノ技術者）が音楽ホールの「心地よい響き」について語った言葉と、表現がまったく同じでした。まさにまったく同じ。一言一句違わないのです！ いや～、なんというか、同じ表現の繰り返しになるけれども、これは本当の驚くべきことで、一見違う世界で音楽に関わっているように見えて、本質では共通するものがあるのだということを認識したのと同時に、こういう本質的な認識を共有するようなアーティストだからこそ、ＧＩＮさんの演奏には普遍的な音楽性の高さが感じられるのだろうなと思った次第です。 とても楽しくてくつろげるライブでしたが、終演後の懇談ではよもやの深い話になり、ちょっとアカデミックな感動も覚えてしまった、ナカシオンライブでした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の5月1日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.04.29（土）	田中正也・關谷範子　～第３回 ジョイフル･ピアノコンサート～　岸和田市立 自泉会館ホール 開演14：00 一般前売2,000円 当日2,500円 学生1,000円
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	第3回ジョイフル・ピアノコンサート（田中正也さん、關谷範子さん）を聴いてきました。（4月29日） 昨年に引き続き、聴きに行きました。昨年の第2回があまりに印象的だったので、ずいぶん以前から、これは聴きに行かねば！と慎重にスケジュール＆体調を調整していました。というのも、2月12日の「リスト生誕200年 特別版」は、下の記事にも書いていますが、思いもよらぬ指のけがのために、事前に予習もしていたにもかかわらず、聴きに行けなくなっていたからです。 具体的にどんな「調整」をしたのかというと、ま、家での持ち帰り仕事があることは仕方がないにしても、「疲労」まで持ち帰って連休初日に寝床でダウンしないように、すべてにわたって抑制的に行動していました。 とくに、前日は職場で新年度の「新人歓迎会」。飲み放題つきで5,500円という、このご時世にお大尽すぎる会費を巻き上げられましたが、乾杯のビールを一杯飲んだ後は酒は一切注文せず、揚げ物比率の高い料理は腹八分目、七分目…。この一晩で大食い・大酒飲みに対して相当な所得移転があったに違いありません。でも、翌日、頭痛と胸やけでは美しい音楽に「酔う」ことができませんからねぇ。ここは我慢のしどころでした。（ってか、翌日に大事な予定がなくても、そういう飲食の仕方はしたことはないけど） 前置きが長くなりましたが（前日のことについては相当ストレスがたまっていたのねん）、そうして気分も爽快に目覚めた29日、天気は今回もほとんど快晴といえる好天で、「自泉会館に曇りなし」の記録が今日も更新だぁ～！と足取りも軽く、岸和田に向かったのでした。 岸和田にはもう何度も訪れているので、駅を出ても最短距離で会場には向かわず、城下町の複雑に曲がりくねった通りを色々と探検してお城へ向かいました。自泉会館はお城の「ねき」なので、ともかく岸和田城に着けばよいのです。今日は、いつもと逆に紀州街道から「こなから坂」をのぼって立った自泉会館の前。気象予報上の「晴れ」にとどまらぬ雲一つない青空に、淡いクリーム色の壁と赤茶色の瓦が冴えていました。思わず写真を数枚。これから始まる音楽会に胸が高鳴ります。 （写真１：本日の自泉会館外観） 開場10分後くらいにホールに入りましたが、すでにかなり席が埋まっていて、開園10分前くらいにはさらに椅子が追加されるくらいお客さんが集まってきました。客層は幅広く、ピアノや音楽の勉強をしている子供さんや指導者の顔が見える（雰囲気でだいたいわかる）のはもちろん、仕立ての良い背広や和服を着こなした年配のご夫婦や、家族みんなで聴きに来たようなグループ、そして私のような出演者のファン・知人関係など、特定の層に偏らない、まさに「ジョイフル」の名にふさわしい客席でした。 ちなみに、この「ジョイフル・ピアノコンサート」の趣旨は、誰もが知っている楽しい曲をきちんとしたコンサート形式で演奏する、というところにあり、前回田中さんが演奏した「エリーゼのために」などはその典型ですが、ピアノの初学者でも弾く曲をコンクールで頂点を競うピアニストが弾くとこうなるよ、という、ある意味で大曲揃いのリサイタルを聴くよりも稀少な機会なのです。 コンサートの1曲目は、今回も、いきなり心を奪われてしまうような印象深い曲が名刺代わりに演奏されました。リストのtotentanz。キリスト教のレクイエムの旋律が繰り返し出てくる、本来はピアノと管弦楽のための作品（だと思う）。これが２台ピアノで演奏されました。１台は30歳のヤマハＣＦ、もう一台は22歳のＣ３です。演奏が始まって聴こえてきたのは、まるで弦を全部張り替えたのではないかと思えるような、輝かしくて粘りのある、圧倒的な力強さを感じるＣＦの音でした。そして小ぶりなＣ３も負けていません。こちらもピアノのサイズからは信じられない重厚な音で、管弦楽の部分を力強く奏でました。強奏部分での田中さんの弾き姿は、今までに田中さんの演奏会に幾度となく足を運んできた私が見ても背筋がゾクゾクするような緊迫感があり、一瞬の妥協も気の緩みも許さないような気迫がひしひしと伝わってくるものでした。たんに迫力がある、というのではなく、弾き姿がとても「厳しい」のです。これはすごい。 曲が弱奏部分にかかると、今度は一転して柔らかいふくらみのある音が広がり、固くて密な空気が詰まった空間がふんわりとした揺らぎを感じる空間に瞬時に変わりました。ピアノ音楽を最近聴き始めたというわけでもないのに、今日もまた、まるで魔法にかかったような気持ちになるから不思議なものです。そして、再び強奏へ。「めくるめく」という言葉はこれを表現するためにあるのかと思うほど、音色が変わる変わる。２台目ピアノもＣＦに劣らぬ豊かな音色で存在感を示します。 プリモを弾く田中さんのフォルテシモは、たとえて言えば、切れ味のよい名刀でスパッと空間を切り裂く感じで、なかなかこれだけシャープなピアノ演奏を聴くことはできません。たとえ、楽器や楽曲について全く知識がなかったとしても、その音だけで純粋に感動してしまうような、能書き不要の演奏でした。 （写真２） 　本日の二台のピアノ 続いて、關谷さんのソロで、二声のインヴェンションより１、２、８番。そして、ベートーヴェンのソナチネ ヘ長調 が連続して演奏されました。「こんなの、子供でも弾ける」と言うなかれ！　一人前のピアニストにとって、ある意味で一番怖い曲がこういう曲であるに違いないのです。学ぶ立場にある人でさえ隅から隅まで知り尽くした曲を、名のあるピアニストがどう弾くのか？　当事者の気持ちを想像するだけで胃が痛くなるような気がします。 インベンションの調べが流れ始めると、それまで鋭い刃物のような妖しい輝きを見せていたピアノが、瞬時にバロックの丸い音に変わりました。２番では、息づかいにハッとする魅力があり、聴き手を深い内省に導く音が心に染みてきました。バッハ作品のよい演奏を聴くと、技術的なことはどんどん意識から消えてゆき、中身をどう受け取るかのみに集中していくような気がします。 ソナチネでは、清らかな明るさ・美しさのある高音部のさえずりと、やさしくてふくよかな中低音部との対話が印象的で、中間部では、しっかりとうたう高音部の旋律の音色が本当に美しく、数分前に刃のような妖しさを見せていたＣＦと同じピアノだとはとうてい思えませんでした。 もしも、これからピアノを習おうとしている子供の親だったとしたら、その演奏を聴いて、「ぜひこの先生に習わせたい！」と思ってしまうような、とても説得力のある演奏でした。 続いて田中さんのソロでリストの「鬼火」。超絶技巧の極みのような曲ですが、この曲は弾き手によって表現の幅がかなり広く、それはつまるところ、ピアニストが「鬼火」としてどんなイメージをいだき、表現しようと思っているのかによるのだと思います。しかし、実際に「鬼火」を見た体験をもとに演奏しているピアニストがいるとも思えませんから（私はこの目で確かに見た、と言っても信じてもらえないでしょう、たぶん）、それはどこまでも心象風景なのです。田中さんの「鬼火」は、腕自慢のピアニストにはガシガシと攻めてくるものも少なくない中、むしろ抑制的とも言えるような、やわらかい揺らぎ感のある、全体の響きが溶けあって感じる演奏で、とても幻想的でした。 田中さんはひき続き、ベートーヴェンの「熱情」の第１楽章を演奏しました。すばらしいダイナミックレンジと切れ味のよいタッチで鮮やかに音の絵を描くのですが、スポーツ的爽快感に終わることのなく、作曲家の心の奥底を、作曲家と同じ「熱情」をもって聴き手に伝えたいという切なる気持ちをいだき全身全霊で表現した、と感じられました。 いや～、ホントに、この１楽章を聴いただけでも、ふだんはそれほど音楽とは縁のない生活をしている人でも、能書き抜きに「ベートーヴェンはいい曲を残しているんだな！」「ピアノはなんてすごい表現力があるんだろう！」と思ってしまう、まさに「ジョイフル」的な一曲だったと思います。 第一部の最期はお二人の連弾で現代の作曲家ギロックのブギ・プレリュードとフェイスタ・マリアッチ。クラシックのピアニストの弾くブギにはかな～り興味深いものがありました。楽譜がそうなっているからなのか、クラシックのピアニストの身体がそれを許さないからなのか、非常に洗練された感じがあって、「もうちょっと泥臭くて、テキトーで、むしろヘタクソっぽくてもいいかも？」と思ったりしました。（＾＾；） 第一部終了後、マイクを取った田中さんはアナウンサーでした。ＣＤ新譜の販売、今後の演奏会のチラシ、御手洗いの場所、そして第二部の開始時間までも、すべて流暢にお知らせして、休憩に入りました。いやいや、コンクールで頂点を争うピアニストが、なんでもこなすもんですねぇ。 休憩を終えた後半、まずは田中さんが一人で入場し、即座にピアノの前に座って弾き始めました。ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」、そしてシューマン「楽しき農夫」。今度は田中さんが「誰もが知っている曲」を弾く番です。実は私は、ひそかにこのコーナーがジョイフルコンサートで最大の聴きどころだと思っていて、猛烈に期待していたりするのです。１曲目、とてもゆっくりとしたテンポで入り、一つひとつの音を味わい尽くすようなタッチで、微妙な揺らぎを伴いながら曲が進んでいきました。そして、低音の響きの作り方が深い、深い！　曲末は、最後の音が完全に消え入るところまで見送って、静寂に溶け込むようにして終わりました。２曲目、とても短くてシンプルな曲ですが、ピアノを習い始めた子供が調子に乗って（笑）弾くようなノーテンキな音ではなく、土とともに、自然とともに生きる農夫の、温かい人となりがにじみ出てくるような響きが聴こえてきました。「生徒さん」の弾くそれとは一味違う、大人の弾く「楽しき農夫」でした。 解説が入って次は田中さんの十八番であるプロコフィエフ作品。「束の間の幻影」より、１番と14番、そしてパデレフスキーのメヌエット、の３曲が続けて演奏されました。前者は、2008年6月8日に神戸芸術センタープロコフィエフホールで開催された、記念すべき「田中正也 プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ 第一回」で、その20曲全曲が演奏されたもの。3年前のこの日に初めて田中さんを聴いた私は、恥ずかしながらこれまでに聴いたことのない曲だったにもかかわらず、まさにこの20曲によって、プロコフィエフ作品の世界の魅力と、演奏する田中さんの比類なき表現力にがっちりと取り込まれてしまったのでした。息の詰まるような時間の流れの中で微妙に揺蕩う弱奏を極めた響きと、他方、見事にそろった切れ味のよい和音が奏でる、強奏・最強奏のスッキリとした力強い響き。今日の演奏は2曲だけでしたが、当日の演奏会の様子を髣髴させる密度の高いものでした。3曲目は、これも一般的には「初級者向」とされることが少なくありませんが、息遣いを感じる旋律のうたわせ方がとても印象的で、技術的な難易度だけでは測りきれない、どっしりとした音楽的存在感のある演奏が心に残りました。 このあと、田中さんのトークが入り、關谷さんが招請されました。後半の關谷さんは真紅のドレスで入場。演奏は、ショパン作品から3曲、「ワルツ 遺作 ホ短調」「ノクターン 遺作 嬰ハ短調」「バラード1番」でした。演奏が始まった瞬間に、ピアノはショパンの世界の音を奏で始めました。いずれも、何か特別なことをしてびっくりさせてやろう、といった妙な仕掛けのない、直球勝負の演奏として聴きましたが、そこはかとない翳りと悲しみを湛えた音が、強奏でもなおコントロールの効いた端正な音として紡がれました。とくにバラード1番で曲が三分の二くらい進んだところから以降の深々とした低音の一音一音がとても丁寧な響きで印象に残りました。とはいえ、クライマックスではどんどん昂揚し、全力疾走で突き抜け、力強い締めくくりとなりました。 このあと田中さんのトークが入り、あらためてこの「ジョイフル・ピアノコンサート」の趣旨と、最後の曲の紹介がなされました。最後の曲は、リストのピアノ協奏曲第1番を2台ピアノでの演奏。最強奏から最弱奏まで、楽器の表現力のすべてをひき出したような演奏でした。特に弱奏は、洞穴に響く水音のような、すーっと広がってさーっと消え入る美しい余韻のある音がとてもとても素晴らしく、まるでピアノとは別の楽器が奏っているかのようでした。そして、二台のピアノの対話感のあるやり取りは続き、曲末に向けて、首を小刻みに振動させ、いよいよ没入してくる様の田中さんの弾き姿は、音楽の、たんなる「神」というよりは「鬼神」が降りてきたようでした。協奏曲を二台のピアノで弾くと、双方が打撃音系の楽器なので、弦と合わせる以上に気持ちが高まっていくように思えました。感情と感動の頂点を極めプログラム最後の曲が終わり、会場からは大きな拍手が起こりました。 アンコールは、關谷さんのソロでのアンコール曲は用意していないということで、田中さんがモーツァルトのトルコ行進曲、最後に連弾で剣の舞でした。 終演後のロビーでの交流はなかなか親密なものがありました。現在ピアノを勉強中の若い人たちは、あこがれの「先輩」にサインをしてもらったり、一緒に写真を撮ってもらったり。記念にもなるし、今後の学習意欲にもつながっていくに違いありません。これは第一にピアニストとスタッフさんのサービス精神あってのことではあるけれども、自泉会館のロビーはこういうことが自然にできるような雰囲気がありますな。なんかその流れの中で、私もこの際、一枚ぐらい写真があってもいいかなと思い、年甲斐もなく、田中さんと關谷さんにお願いして３人揃いの写真を撮ってもらいました。シャッターを押してくださったのは田中さんのお父さん。なんて贅沢なんだぁ～。 ピアニストさんたちには、今日の演奏を聴いた手短な感想とお礼の言葉を述べて、おいとまをしました。２月のアクシデントを取り戻す、充実した演奏会でした。 …と、ここで終わるわけではありません！ 演奏会終了後は、岸和田散策が習慣になってきた昨今、今回もまた、まっすぐに駅には向かわずに、こなから坂を下りて駅とは逆の浜に向かって歩き始めました。 坂が紀州街道に突き当たったところにある老舗のお菓子屋さんで地元の名産をいくつか購入した後、さらに浜側へ。何の下調べもせず、今風のナビなんぞも使わず、自分の嗅覚だけで歩いていくのが昔（高校生時分）からの観光スタイル。そして今回も！春らしい巡り合いがありました。 海岸沿いの住宅街のお宅には、熱心に植物を育てているところがけっこうあり、その中には「花屋敷」といってもいいようなところがあったのです。名前を知っている者から知らないものまで、春の花が咲き乱れている岸和田の浜沿いの住宅街は、ガイドブックなどに掲載されている可能性が極めて低いですが、今日のこの日を象徴するような、とても印象深い出逢いでした。 （写真３） 　藤 （写真４） 　馬酔木 （写真５） 　なんだかわからないけれど草花がいっぱい(1) （写真６） 　なんだかわからないけれど草花がいっぱい(2) できすぎのような色鮮やかな締めくくりを得て、帰路につきました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の4月29日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。ただし、テキストのみで写真は含まれていません。）
2011.03.27（日）	加古隆　「クァルテット」　神戸朝日ホール　開場 14：30　開演 15：00　出演：加古隆(Pf.)、相川麻里子(Vn.)、番場かおり(Va.)、植木昭雄(Vc.)　6,000円
	→昨年12月のいずみホール公演では、実力派チェリストが小沢征爾のオーケストラでNY公演に行っていたため若手による代理となり、本来のメンバーで聴くことができず残念なことこの上なかった加古隆クァルテット（高価なチケットにもかかわらず大阪公演だけが代理だったので口には出さずとも不満を抱いた人も多かったはず）。今回は、このクァルテット本来の音を聴かせてくれるのかもしれません。 　ところで、この春グランド再オープンする神戸朝日ホールは、旧居留地という交通至便の立地に加え、500人という使い勝手の良い収容人数、および職員による手厚いレセプションで定評のあった名ホール。神戸市内を会場とするイベント需要が周辺の類似施設の需要を奪う形で集中するのではないかとささやかれています。
2011.03.05（土）	第7回 神戸クラシック音楽祭　＊モーツァルト像 建設20周年記念＊　兵庫県民会館９階ホール　 13：00開場 13：30開演　前売2,000円 当日2,500円 中学生未満1,000円
	→およそ１年ぶりに開催される神戸クラシック音楽祭は、会場を県民会館へと変更し、9人にもおよぶゲスト演奏者と友情出演の合唱団を迎えて開催されます。 公式チラシの取り込み画像ｐｄｆへ
2011.02.26（土）	アンサンブル フェリーチェ アフタヌーンコンサート ～フェリーチェが奏でる春の音～ 岸和田市立自泉会館 13：30開場 14：00開演 （出演：齋木慶子、田仲真弓、吉野里美、藤本恵以子、白原理香）
	→詳細は「白原理香」さんのページから、公式チラシｐｄｆを参照してください。
鑑賞メモ：	2月26日 アンサンブル フェリーチェを聴いてきました。 演奏会で岸和田の自泉会館を訪ねるときにはこれまですべて快晴だったのですが、今回もまた抜けるような青空の快晴で、スパニッシュ様式の建物の最高に美しい姿を今日も目にすることができました。 以前に拝聴した時と比べて、ソプラノとヴァイオリンがお一人ずつ増えたアンサンブル フェリーチェの演奏は、ハーモニーにさらに厚みを増し、多彩な重唱とヴァイオリンというもう一つの「声」でも聴かせる、とても充実したものでした。しかも、プログラムや司会進行がとてもよく練られていて、肩が凝ったり飽きてしまったりすることが皆無の、誰もが楽しめるプログラムと演奏でした。 演奏会終了後は、岸和田城近辺の旧市街をぶらりと散策しました。これについては、事前に岸和田市民の出演者さんに案内をいただいていたので、的外れな場所に迷い込むことなく、この時期ならではすばらしいものに出会うことができました。その第一位が蛸地蔵（天性寺）の紅梅。これほど美しく咲いている梅は見たことがないと思えるほどの完璧な美を誇っていました。 美しい音楽と、美しい街並み、そして美しい季節の花。できすぎのような気もする早春の一日でした。 ところで、この日の道すがら私が出会った岸和田の人たちの間では、ＮＨＫ総合テレビの「鶴瓶の家族に乾杯」の岸和田編が2月28日（と3月7日。いずれも月曜夜）に放映されることでもちきりでした。取材を受けた地元の人の話では、だんぢりだけでなく、地元の人が見どころだと思っている、歴史的景観を誇る地域の映像がまちがいなく出るようです。じっさい、だんぢり祭りがない時には、この街はある意味で京都以上に落ち着いたたたずまいのある、馥郁たる文化の香りがする都市なのです。 第１回の放映は今晩になりますが、この番組、私も見逃さないようにしたいと思います。 （ブログ本体には写真も掲載しています。） （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の2月28日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2011.02.18（金）	アンドラーシュ・シフ　～巨匠が奏でるピアノ・ソナタの金字塔～　ベートーヴェンの孤高の境地「最後の３つのソナタ」　いずみホール　開演19：00
	→何の説明も不要の「最高に価値のある」という形容が可能な演奏会の一つ。お金と時間があれば誰だって聴きに行きたいに違いないけれど・・・。
2011.02.12（土）	田中正也・關谷範子　～ジョイフル･ピアノコンサート　リスト生誕200年　特別編～　岸和田市立 自泉会館ホール 開場13：30　開演14：00 一般前売2,000円 当日2,500円 学生1,000円
	→チラシによると、今回のジョイフル・ピアノコンサートはオールリストプログラムで、愛の夢、ハンガリー狂詩曲第13番、ソナタロ短調（以上ソロ）、祝典ポロネーズ（４手連弾）、死の舞踏（２台ピアノ）、などが予定されています。その他、詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2011.01.16（日）	ニッポン人ノ　セイヨウオンガク　Vol.2　～邦人作品を集めて～　兵庫県立美術館　アトリエ１　開場13：30　開演14：00　2,000円　出演：丸山依里(Sop.)、東瑛子(Vn.)、竹田景子(Pf.)、奥田聖子（Sop.友情出演)
	→神戸芸術センターではソロでご活躍の竹田さんが声楽ならびに器楽（ヴァイオリン）の伴奏でご出演。近年高い評価を得ている竹田さんの伴奏を生で聴くことのできるチャンスです。(追記：ソロによる組曲演奏もあります。）
鑑賞メモ：	1月16日「ニッポン人ノ セイヨウオンガク Vol.2」を聴いてきました。 じっさいに聴きに行くまではどんな演奏会になるのか予想もできなかったのですが、終わってみると、まったく予習もせずに（というか、音源入手はほぼ不可能な状況で）聴きに行ったにもかかわらず、最初から最後まで、作品についていけなくなったり、逆に退屈したり、あるいはヘトヘトになったり、ということが一切なく、とても楽しくて充実した時間がたおやかに過ぎて行き、終演が名残惜しく感じられるほどでした。 演奏されたのは、 三善晃：組曲「こんなときに」（Pf.) 武満徹：妖精の距離（Vn. Pf.) 中田喜直：六つの子供の歌（Sop. Pf.) 小倉朗：ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ（Vn. Pf.） 三木稔：のはらうた　より（Sop. Pf. Vn.） En. 冬景色（Sop. Pf. Vn.） でした。 演奏については、「技術的に優れている」という面よりも、演奏者たちが作品の世界を完璧に理解して、作曲者や作詞者が表現したいと思っていることを見事に具現化した、という面のほうをより強調すべきだと思います。これらの作品には、西洋のクラシック曲のように膨大な研究の積み重ねがあるわけではなく、誰もが参考にするような「金字塔」的な録音があるようにも思えません。つまり、演奏者は純粋に楽譜と対峙し、ほぼ独力でそこに表現されたものを読み取って、自らの演奏技術を助けに音声にしているに違いないのですが、演奏には圧倒的な説得力があり、安心して作品世界の中にどっぷりと浸ることができました。年始にして、「今年一番の演奏会でした」なんて言葉が口から出そうになってしまうほど、「伝えたいこと」が深く心に響く演奏会でした。 技術的にはいずれも、弱奏時の、音量的には極小なのに音楽的には最大ともいえる力強さをもって深々と語りかけてくる音色や声が見事で、あとは推して知るべし、といったところです。個別には、ソプラノの、清らかかつ生命感にあふれる声質と、日本語の歌詞の美しさを際立たせる口跡鮮やかな歌いまわしが非常に印象深く、ヴァイオリンでは、ただ整った音を出すのではなく、作品によってフィドル風の素朴な力強さに溢れた響きから、篠笛のような肌触りを感じる空気感のある音、そして、一本の絹糸で綴っているかのような繊細な旋律まで、さまざまな質感の音色が鮮やかに描き分けられ、そしてピアノでは、紙に印刷された音符の並びがよくこれほどまでに詩情豊かな音となって空間で形をなすものだと、まさに今回も「魔術的」な陶酔感を与えてくれるものでした。 いやー、もうほんとうにすばらしかった。この日の演奏会は、今後ずっと心の中に鮮明な記憶となって残っていくに違いありません。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の1月23日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.12.25（土）	田中正也　プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ "エクスクールスィャ" 第3回 プロコフィエフホール 開場13：30　開演14：00 前売り2,500円 当日3,000円
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞日記：	「プロコフィエフピアノ曲全曲演奏シリーズ ”エクスクールスィャ”」を聴いてきました。
2010.12.23（祝）	クリスマスコンサート シューマン・ショパン生誕200年 ～ソプラノ＆ヴァイオリン＆ピアノによる色とりどりの音楽～ 岡本ドンク３Fサロン 13：30開場 14：00開演 （出演：中濱美佐、湯川夏子、陸亜也子、武市直子）
	→詳細は「中濱美佐」さんのページから、公式チラシｐｄｆを参照してください。
2010.12.16（木）	青山秀直　Clarinet Fantasy　～ベルギー・アントワープ音楽院バスクラリネット科教授ヤン・ギュンス氏を迎えて　兵庫県立芸術文化センター　神戸女学院小ホール　開場18：30 開演19：00　一般3,000円　高校生以下1,500円　ピアノ伴奏：宮本聖子
	→神戸芸術センターではすばらしいソロの演奏（リサイタル）をこれまでに二度聴かせてくれている宮本聖子さんが伴奏で出演する演奏会。「・・・とピアノのための」と題する作品が二つも用意されており、たんなる伴奏を超えてピアノ演奏そのものも楽しめる演奏会になりそうです。
鑑賞メモ：
2010.12.12（日）	加古隆　「クァルテット」　いずみホール　開場 15：30　開演 16：00　出演：加古隆(Pf.)、相川麻里子(Vn.)、番場かおり(Va.)、植木昭雄(Vc.)
	→ベーゼンドルファーは、楽器の横に「Bosendorfer」と書いてあるから美しい音がするのではありません。この楽器の真に美しい音とはどんなものなのかをkumaに教えてくれたのが、加古隆＋いずみホール＋調律K氏、による年に一度の演奏会（ツアー）。これを聴かずして、インペリアルの「美しい音」を語ることはできないとさえ思います。今年のリサイタルはクァルテットの編成になり、さらなる深みを究めようとしています。
鑑賞メモ：
2010.12.05（日）	Christmas Concert ～シューマン生誕200年～　岸和田市立自泉会館 13：30開場 14：00開演 （出演：中濱美佐、吉野里美、内田倫子、白原理香）
	→詳細は「中濱美佐」さんまたは「白原理香」さんのページから、公式チラシｐｄｆを参照してください。
2010.12.04（土）	saveur du poussin （サビュール・ドゥ・プサン） クリスマスコンサート　宝塚ホテル ティーラウンジ「ルネサンス」　開場14：45 開演15：00　2,500円
	→宗教曲をきちんとこなせるメンバーによるクリスマスコンサート。今年はピアニストが二人になり、ギターも加わります。
鑑賞メモ：
2010.11.14（日）	イェルク・デームス ピアノリサイタル　兵庫県立芸術文化センター　KOBELCO大ホール　開場13：15 開演14：00
	→「ドイツ・ロマン派の伝統を継承　ウィーンの大巨匠」　「奇跡の音色」　こういう壮大なコピーをつけて何の違和感も感じないところがすごいです。御年82歳のリサイタルになります。
鑑賞メモ：
2010.11.07（日）	第3回 音楽の森へ行きましょうコンサート　～ショパンのサロンへようこそ！～　世良美術館　神戸市東灘区御影　前売（一般）：2,800円　（出演：田中正也、他）　駐日ポーランド共和国大使館後援
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	世良美術館がショパンのサロンになった日（11月21日増補） 　10月7日、第3回「音楽の森へ行きましょうコンサート」が御影の世良美術館で開催されました（第2回は、2009年1月に神戸芸術センターショパンホールで開催）。このコンサートシリーズは、日本ポーランド協会関西センターが主催しているもので、駐日ポーランド共和国大使館が後援、司会進行はポーランド人、お客さんもポーランドの方が少なくなく、お楽しみにポーランドのお茶と手作りお菓子つき、というポーランド尽くしの演奏会でした。さらに今回は、今年生誕200年のショパンがテーマ。ピアノ曲に加えて、ヴィオラとのアンサンブル、ソプラノ独唱、ゆかりの詩の（ポーランド語での）朗読までありました。ショパンが生きていた当時のサロンの雰囲気を再現する、という趣向なのでした。 　出演者は、日本ポーランド協会会員の音楽家さんたちと、ゲストの田中正也さんでした。会場は満席、演奏会のあとはポーランド洪水被害に寄せるチャリティーオークション、そして、ポーランドのお茶とお菓子を楽しむミニパーティも、と盛りだくさんでしたので、演奏会そのものは休憩なしのノンストップで進行しました。しかしまあ、中途半端に休憩を入れるよりも、会場全体の集中が途切れず、むしろよい考えだったと思います。 　音楽家だけで８人、朗読も含めると９人が出演し、プログラム項目も19におよぶため、すべてを個別に紹介することは私の力の及ぶところではありませんが、演奏の雰囲気をざっと紹介すると次のような感じになります。 　まず、冒頭は關谷範子さんと田中正也さんの連弾によるタランテラから始まりました。關谷さんは田中さんの日本におけるよき理解者でありこれまでにも共演しているだけに、息がぴったりで、私が弾き姿がよく見えない会場後方で聴いていると、どちらがプリモを弾いているのかセコンドを弾いているのか、音だけではわからないくらいによくなじんでいました。舞曲らしいとても軽快な感じの演奏でしたが、ピアノの第一声は、カドのないかなり柔らかい感じの音でした。 　続いて、ポーランドからの留学生（だったと思う）マルチン君の詩の朗読ですが、ただ読むだけでなくＭＣトークを入れてポーランドのノリでちょっと「笑い」を取ろうとするのです。しかしそれが、コトコテの関西人のkumaには微妙にツボを外していて、このあと要所で合計３回入った彼のトークの、その笑いのツボのずれ具合が、ネタそのものよりもとても面白く、「ポーランドの若者って、こういうことを面白いと思うんや～」とけっこう比較文化論的に分析しながら聞いていました。 　ピアニストの演奏は、演奏者がかわりながら進行するのですが、この日のコンサートの最大の特徴は、演奏者がすべてピアノの左側の大きなガラス窓（というかほとんどガラス壁）沿いに並んで腰かけて待機していたことです。正装の音楽家さんたちが９人もずらりと勢揃いしている様子がそれは華やかなものでした。演奏は、「華麗なる大円舞曲」、プレリュード、ポロネーズ、と代表的な曲がどんどん続きます。長く引っぱった後にダンパーが上がるときの音の消え方がとてもきれいで、演奏もさることながら、ピアノそのものも「よく整備されているな～」と思いながら聴いていました。 　７曲目に入った田中さんとヴィオラの植田延江さんによる「ピアノとチェロ（ヴィオラ）のためのソナタOp.65 第一楽章」、これはすごかった。ヴァイオリンと比較してやや控えめな存在に感じられるヴィオラが力強くうたう、うたう。そして、その力強いヴィオラに呼応して田中さんの伴奏もひときわ熱のこもったものとなりました。ものすごくドラマティックな演奏に会場全体が息をのみ、最後には大きな拍手がわき上がりました。 不思議なことに、というか、むしろコンサート調律がされたピアノにはよくあることですが、この演奏から以降、スタインウェイB-211の音がガラリと変わりました。マズルカ、エチュードと続きましたが、パリッとしたソリッドな音でいっそう表現力が豊かになってきました。 　さて、言うまでもなく、同じピアノを弾いていても、ピアニストによって音色が大きく異なるのですが、続く石井玲子さんの演奏（ワルツ遺作＆「パガニーニの想い出」）は、この日一番の「木の音」でした。B-211がやさしくまろやかに歌うことのできる声のありかをしっかりとつかんだ演奏は、演奏の「間」の良さとも相まって、とても気持ちよく聴くことのできるものでした。 　次にプログラムされていたのはなんと「ラ・カンパネラ」。司会者「なぜ、リストなんですか、田中さん？」　「パガニーニとリストは友だちでしたし、同じスラブ圏ですし、…」とオトボケ気味に返答する田中さん。じっさいは、せっかくゲストで田中さんを招くのだから十八番を一曲披露してもらおうということだったと思うのですが、目の前で繰り広げられる、筋が通っているのかいないのかわからないようなやり取りはやがて、15歳の時からロシアに暮らしている田中さんに、ロシア語とポーランド語で意思疎通はどれくらいできるかという話になり、しかも状況説明は日本語なので、三つの言語が交錯する、なんかわけがわからないけれどもともかくやたらと国際的な雰囲気のプレトークとなりました。演奏そのものは、ピアノの音はますます抜けが良くなり、ペダルワークに応えるすばらしいスタインウェイらしい表現力に満ち溢れたものになりました。速く・正確で、超タイトな、これぞ田中さん、という一曲でした。 　この日出演の音楽家の中には、ポーランド人のソプラノさんもおられました。ヤドヴィガさんとおっしゃる方で、私自身は、この国の声楽家の方は初めての拝聴でした（ピアノ伴奏は石井さん）。プログラムされていた３曲は、後にいくほどたっぷりとした量感のある歌いっぷりになってきて、いずれも事前の知識が皆無の曲だったのですが、声そのものに感動することができました。 　おなじみの「子犬のワルツ」とノクターン遺作（嬰ハ短調）は、關谷さんでした。なじみがありすぎる曲なので、音楽的なことをどうのこうのというよりも、最近は「この子はどんなわんこなのだろう？」と想像しながら聴いています。この日の子犬は、とてもしつけの行き届いた上品なわんこで、やわらかくコロコロとした感じで走り回っていました。ノクターンは、演奏者によりさまざまな味があるのですが、あまりタメすぎない息遣いのしっかりしたうたい方が印象的でした。 　トリは田中さんの「英雄ポロネーズ」でした。もう何回も聴いていますが、会場とピアノにより味わいがかなり異なります。今日は太くて分厚い低音の素晴らしい表現力を堪能しました。田中さんの表現にスタインウェイピアノが応えた、といった感じでしょうか。これまで以上に速く疾走する馬は、地響きを立てて迫ってくる迫力があり、ついには馬が（最近流行の表現で言えば）３Ｄで頭の上を飛び越えていくような感覚さえ得ました。また、迫力のある強奏だけでなく、弱奏では一転して、体をつつみ込まれるような丸くて柔らかい響きがふわぁ～っと立ち上り、鮮やかなコントラストに酔いました。聴くたびに新たな魅力を感じる、すばらしい演奏でした。 　かくして、田中さんは「ゲスト」とはいえ、ソロも連弾もアンサンブルもという大活躍でした。そして、今日初めて田中さんの演奏を聴いたお客さんたちも大感動で、大きな拍手が送られていました。演奏会終了後のオークションで、田中さんの新譜CDが定価以上の価格で落札されていたのが印象的でした。これは言ってみれば「感動分のプレミアム」と言ったところでしょう。 　オークションというと、出品されたものの中にポーランドの作曲家シマノフスキのアンソロジーがあり、落札しました。珍しい写真も満載の資料価値の高い本でしたが、ライバルがいなかったので1,000円でした。その他、出品されたものは40点27種類ありましたが、すべてが落札されてメデタシメデタシでした。 　ミニパーティーに入った折、お客さんが地階ギャラリーに移動した１階会場で美術館のスタッフさんたちとお話をすることができました。世良美術館には以前にも何度か来たことがあって、純粋に世良臣絵画伯の作品を見に来たときに、けっこう長時間、作品の由来などについて教えていただいていたので、スタッフさんも私の顔を覚えてくれていて話が弾みました。 　ところで、今日の話題の中心は美術館の南東の植え込みに咲いている花でした。可憐な青い花と黄色味を帯びた小さな実がとても印象的だったのですが、この花には見覚えがありました。以前に訪れた時に画伯が水彩で花を描いた作品が特集で展示されていて、その中の一枚にあったと記憶しているのです。すっきりとした清らかな美しさが際立った作品でしたが、そのモチーフが美術館の植え込みに咲く花であったということを本日初めて知って、何かの環がパチンと閉じたような感動を覚えました。 　繊細な絵画を展示するのに適した環境の中で管理されたピアノ（スタインウェイB211）はとても魅力的な音をしていて、１階の空間は大理石床で声楽にも適した響きがあるので、近年音楽関係のイベントが頻繁に開催されるようになっている施設なのですが、イベントのない日はもちろん美術館として機能しています。オーナーの作品（小品から大作まで）に加えて、神戸にゆかりの小磯良平の作品も収蔵・展示されていて、御影の住宅街の中にたたずむ小さな個人美術館ですが、なかなか見ごたえのある美術館だと思います。 　11月7日は、この施設ならではの環境が十分に活かされた、充実したひと時を過ごすことができました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の11月8日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.11.06（土）	Farewell concert 2010 大阪府下大学合唱団４回生有志　豊中市立ローズ文化ホール（阪急電鉄宝塚線庄内駅下車徒歩約８分）　開場18：30　開演19：00　無料　客演ピアノ：竹田景子
	→竹田景子さんがソロに勝るとも劣らぬ情熱を注ぐ合唱＆声楽の伴奏を担当される演奏会。チラシによると「客演」待遇であります。なお、演奏予定曲目の中には、松下耕作曲作品もあります。
鑑賞メモ：	念願かなって、竹田景子さんの合唱伴奏の初拝聴となりました。 　演奏会そのものは、大阪の国公私立大学に在籍する４回生が出演する合同 farewell concert だったので、演奏者も聴衆もほとんどが大学生でした。この演奏会に竹田さんは「客演ピアノ」として迎えられ、三部構成のステージのうち、第一、第三ステージに出演されました。 　その演奏は、もうとんでもなく芸術的なもので、もちろん歌より前に出しゃばってくることはないのですが、おおよそ「伴奏」の範疇には収まりきらない多彩な音色が枯れることのない泉のようにどんどん湧出してきて、若い合唱メンバーたちの演奏を、セルフコントロールの効いた音量とは正反対の音楽的力強さで支え、最良の表現へと導いて行くのです。 　この光景を目にして私は思いました、 　「君たちはなんという幸せ者なんだ！」 　と。 　入場無料の演奏会ゆえ、経費節減のためかプログラムには竹田さんのプロフィールについて紹介しているスペースはまったくなかったのですが、竹田さんの後輩以外の諸君、自分たちがいかなる状況で歌っているのかきちんと認識できていましたかな？君たちの伴奏をしてくれているこの人は、たんなる「よその大学のピアノがうまい先輩」ではなく、つい先日開催された「日本音楽コンクールの声楽部門（歌曲）で歌い手とともに本選まで進まれたお方」なのですぞ！ 　大学生たちが、卒業を控えた最後の演奏会で気持ちを高ぶらせている中に混ざって、初めて聴く竹田さんの伴奏の、予想をはるかに超える強烈な引力にどんどん引き込まれていくkumaがいました。 　後半の出番では、伴奏ピアノにも大きな聴かせどころがある松下耕作品も演奏され、プログラム的にも非常に充実していました。 　合唱伴奏に関する認識がこの日を境に一変してしまった、きわめて水準の高い伴奏を聴くことのできた演奏会でした。
2010.10.31（日）	岸部眞明＆GIN ジョイントライブ　大阪豊中 Livebar Kids （豊中市清風荘1-3-21 阪急電鉄宝塚線蛍池駅下車 徒歩７～８分） 開場 18：00　 開演 19：00　前売り3,000円 当日3,500円 （ワンドリンク付） お問い合わせ：06-6858-4424
	「Kids」 のWebサイトへ（外部リンク） →日本を代表するフィンガーピッカーの一人岸部眞明さんと、若手実力派ギタリストGIN（ジン）さんとの共演が、8月に引続き実現！今回はギターのみでの共演ですので、審査が厳密なことで知られるコンテストで高い評価を受けたGINさんのギター演奏をたっぷりと楽しめます。岸部さんをまだ知らない？なんていう方も必聴。岸部さん自身が1995年のファーストアルバム以来、あふれ出る泉のように生み出してきた美しいメロディに触れる絶好の機会です。
鑑賞メモ：	岸部眞明＆GIN ジョインライブを聴いてきました。(1) 一日遅れの投稿です。 10月31日（日）の夜はあいにくの天候でかなり強く雨が降っていましたが、会場は満席、熱気にあふれていました。GIN（ジン）さん－－とシオンさん－－のホームグラウンドともいえるKidsですが、岸部さんは初登場ということで、近所の人たちにとっては大御所の演奏に生で接するまたとない機会だったと言えるでしょう。 この日のライブは、8月末の岸部＆ナカシオンのジョイントライブと同様に、実質3時間の充実度。GINさんのソロで7曲、岸部さんのソロで9曲（長くてオチのないトーク付）、ジョイントで7曲、そしてアンコールで１曲、と、誰にも「物足りない」とは言わせない構成でした。 アンコールでは、「お客の一人」として来ていたシオンさんが舞台に招かれ、というか引っ張り出され、岸部さんとGINさんのギターをお伴に歌を一曲。そこにシオンさんがいるのに歌わずに終演するなどお客の誰一人として考えていない空気の中、当然の成り行きで、一曲だけだけれども、聴き手の気持ちの中にゆるりとしたお人柄がすうっと忍び込んでくるような語りと、心がほどけるような歌を聴くことができました。二人の研ぎ澄まされた演奏を3時間にわたって堪能したあとの締めくくりとして、これ以上にない最高の一曲でした。 終演後は、初岸部さんライブのお客さんが岸部さんを取り囲み、大記念撮影大会。いつも感心するのだけれど、最近はアジアの新興国から三顧の礼で迎えられるくらいの大きな名前になっているにもかかわらず、ライブ会場ではいたって気さく。お客さんが満足するまでツーショットでも集合写真でも中に入ってくれるし、これまでに何万回も聞いているに違いないギター小僧の素朴な質問にも丁寧に助言するし、もちろんCDを買ってくれた人には日付と相手の名前入りでサインをしてくれて、望めば握手もしてくれる。 初ライブだったとしても、「あの岸部さん」にこれだけ親しくしてもらって、ファンにならないほうがおかしいのです。たんなるブームではない「ゆるぎない人気」というものは、演奏家自身がこのようにして一人一人のお客さんを大切にすることの積み重ねの上に成り立っているのだということを実感します。（これは、どんな音楽分野でも同じなのでしょうね。あの加古隆でも握手会をするくらいですから。） 私自身も、最近発売された岸部さんの韓国版ベストアルバムを手に入れてサインもしてもらったし、その際に短時間だったけれど同世代話？をすることもできたし。充実の一日でした。 あれ、GINさんの演奏についてほとんど書いてないって？　ご心配なく、あらためて続きの記事で書きますよ～。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岸部眞明＆GIN ジョイントライブを聴いてきました。(2) 岸部さんの演奏に対する賛辞はネット上にあふれかえっていますので、ここではやはりGINさんの演奏に的を絞って書きましょう。 kumaは、GINさんというギタリストに初めて出会って以来、不思議にその演奏に魅かれるところがあり、岸部さんですら年に数回しか聴かないのに、短期間にそれ以上の頻度でライブに足を運ぶことになりました。どうしてこういうことになるのかなと常々思っていたのですが、この日の演奏を聴いて、なんとなくわかってきたような気がします。 要するに、「GINさんの演奏には自分自身の表現がある」のです。 ギターに限らず、高度な演奏技術を持っていることはすばらしいと思いますが、それだけではもの足りない。何度も繰り返して聴きたくなる音楽というのは、「誰かのように上手い」のではなく、そこに自分自身の音楽があるものだと思うのです。 この点について、GINさんの楽曲（オリジナル作品）は、曲のテーマに対する表現の掘り下げ方が深く、今までに私が気づくことがなかったような視角から対象に迫ってきます。もちろん最初は、そのテーマにまとわりつく固定観念にとらわれているので、演奏を聴き始めて「？」と思うこともあったのですが、何度か聴くうちに、「なるほどなぁ～」と猛烈に得心してしまいます。 たとえば、「七夕」（たなばた）という曲がありますが、この曲を聴いて私が感じるのは、単純な情景描写を超えた、大きな広がりを感じる心象風景です。テーマをもとにして描くものが、良い意味で抽象的で、茫洋と広がる解釈の余地を聴き手に与えてくれるのです。他方、このことは、初めて聴くと曲をすぐには理解できないという面を伴うことになるかもしれないのだけれど、聴きこむと、この曲に込めて伝えようとしているギタリストの想いが伝わったように思える瞬間がやってきて、その時の感動は大きなものがあります。 さらに、GINさんの演奏には、ギターという楽器が生み出す「響き」に関する鋭敏な感性が反映されています。たとえば、この日も演奏された「パストラル」。グレゴリオ聖歌にインスパイアされて生まれた曲だということですが、オープンチューニングで紡がれるシンプルな旋律から生じる倍音が、聖堂を満たすコラールのように響いてきました。 また、GINさんいわく当初は自分でも覚えられなかったくらい特殊なチューニングの上で奏でられる「竹取物語」では、ギターで演奏しているのに、まるで笙の音（ね）のような響きが旋律の背景を埋め、しかもその響きが不断にゆらぎ、また、ドロップチューニングされてテンションが低くなった弦がフレットに触れて生じる細かいノイズはいかにも竹の葉擦れの音のように聴こえてきました。 はっきりいって、こんな音楽、今までにGINさんの演奏以外で聴いたことがないのです。 もちろん、伝統的・標準的な奏法についても死角はありません。息の長いフレーズで主旋律がレガートにくっきりと浮かび上がってくるタッチ、高速フレーズでのとても切れ味が良く音の分離感が明瞭なフィンガリング、そして、なにより、CDよりもライブの方が良いとさえ思わせるステージ上での安定したパフォーマンス。ほんとうに、いつでも安心して聴いていられます。 GINさんのギター（そして、ナカシオンでの活動）には、今後もますます注目していきたいと思います。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の11月1日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.10.30（土） 2010.11.03（祝）	船本孝宏指揮　プッチーニ　オペラ「ラ・ボエーム」全曲公演　神戸元町カフェ＆レストラン「アマデウス」　開演15：00　2,100円（ワンドリンク付）　要予約　最大50席 ～キャスト～ 　ミミ（お針子）：水津 葵香子（Sop.） 　ムゼッタ（店員）： 松岡 左矢可（Sop.） 　ロドルフォ（詩人）：横山 剛（Ten.） 　マルチェッロ（画家）：西田 昭広（Br.） 　コルリーネ（哲学者）：山川 大樹（Bs.） 　ショナール（音楽家）：西村 明浩（Br.） 　ブノア（家主）：仲谷 文雄（Bs.） 　アルチンドロ（参事官…パトロン）：仲谷 文雄（Bs.） 　パルピニョール（おもちゃ行商人）：奥 大輔（Ten.） ～合唱～ 　中島 雪絵　山田 絵美　長野 みどり　奥 大輔　仲谷 文雄　有本 裕之 ～子役～ 　川口 さくら　山口 彩乃　福原 侑香　笛吹 朋花 ～アンサンブル～ 　指揮＆編曲：船本 孝宏 　クラリネット：池田 奈月 　リコーダー：近藤 芳美　 　トランペット：松村 学 　ヴァイオリン：永嶋 裕理 　コントラバス:：岡田 夏奈 　ピアノ：岩本 美恵子 ～音楽スタッフ～ 　奥 大輔　笛吹 幸恵
	→作曲家の船本さんが初めてオペラの指揮に挑戦する記念すべき演奏会です。が、キャストは本格的です。船本さんを強力な演奏家陣が支えます。 船本孝宏さんのブログ（コンサート情報）はこちら
2010.10.17（日）	高槻音楽家協会定期演奏　高槻現代劇場中ホール　出演：時本さなえ(Vn)，吉久夏子(Pf）
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	高槻音楽家協会第34回定期演奏会（時本さなえさん、吉久夏子さん他）を聴いてきました。 　10月17日、すごしやすく気持ちのよい晴天に恵まれた一日でした。以前から関心があった高槻現代劇場でご縁のあるアーティストの演奏会があると知って、聴きに行きました。同劇場は阪急高槻市駅徒歩5分ほどのところにある交通至便なホールで、高山右近で有名な高槻カトリック教会の隣、といえばすぐわかると思います。会場は中ホールだったのですが、入館してびっくり、固定席約500の中ホールはそのすべてが地下に埋め込まれており、ステージの高さは地下3階に相当するのです。しかも、ロビーを含めて地下とは思えないゆとりと開放感のある大空間。隣が由緒ある教会なのでこれ以上ない配慮をしたのだと思いますが、それだけお金をかけることのできる高槻市も大したもんです。 　さて、演奏会は大合奏やコーラスも含めて合計9組が出演する本格的なものでした。どの演奏にもそれぞれに聴きどころがあり、お誘いいただいた１組だけを聴いてさっさと帰る、なんてことはせず（する気にはなれず）最後まで楽しく聴いていました。 　第2部の最初が、時本さん（ヴァイオリン）・吉久さん（ピアノ）によるツィゴイネルワイゼンでした。知らぬ人のない作品なので、曲そのものの力で感動することは当然です。しかし、LIVEの演奏会なんだから、それ以上のものを聴かなければ。 　冒頭、管弦楽伴奏では斉奏するところを、体も踊る渾身の強奏で始まったピアノ伴奏版ツィゴイネルワイゼンは、とても鋭く切れ味の良いヴァイオリンが誰もが知っているあの旋律をうたい上げ、一瞬にして会場の空気が変わりました。そして、このModerato部分に続くLentoの部分で、kumaにとって今日最高の聴きどころに巡り合いました。ここでは、ヴァイオリンが哀感にみちた旋律を切々とうたうのですが、管弦楽伴奏の場合弱奏の持続音が背景を埋めているところを、ピアノ伴奏の場合は間欠的に非常に限られた音数の和音を置いていかなくてはならないのです。息が詰まるほどの緊張の中で、もうこれ以上ないという呼吸で置かれていく、そっと弾いているのにこの上なく存在感のある、奥深い音たちにぐっと心が引き込まれました。「ここのところはええなぁ～、記憶に残るわ」と心の裡でつぶやいてしまいました。 　第2部から2拍子になって独特のリズムが出てきて、第3部では全力疾走のクライマックス部分へ。kumaの周りで聴いているたくさんの人たちの気持ちもどんどん高揚していっている様子がよくわかります。しかし、ヴァイオリンもピアノも演奏そのものにはどこまでも冷静なコントロール感があり、スキッと弾き終えました。そして、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。 　ヴァイオリンの時本さんは、夏に拝聴したチェロの時本野歩さん（＝吉久さんと共演）とごきょうだいということで、終演後は吉久さんに紹介していただき、本日使用した楽器（ヴァイオリン）についての専門的な話なども伺うことができ、とても勉強になりました。 　ところで、「勉強」というと、本日ピアノ伴奏をされた吉久さんのブログ記事では結構勉強させてもらっています。つい最近も、古典派の楽曲を深く理解するのにおおいに役立ちそうな記事がありました。Googleからアーティスト名で一発で検索できるし、拙Webサイト（E135）の artist's rooms からもリンクしていますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の10月17日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.10.16（土）	イリマ・プレゼンツ　～音の花束Vol.4　 1周年記念コンサート～　豊中ローズホール　開演14：00　クラリネット：池田奈月　ピアノ：浜本佳世子
	→作曲家船本孝宏氏への委嘱作品「魔女のパンプキンパイ・クッキング」が演奏されます。 →「夕陽丘高校出身の音楽家」さんたちのページから、「池田奈月」さんのブログも参照してください。
2010.10.02（土）	～モスクワに愛されて～ 田中正也ピアノリサイタル　輝くロシア　モデルオフィス大阪（中之島三井ビルディング18F）　開演 14：00
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2010.10.01（金）	岩本雄太 サクソフォンリサイタル　イシハラホール　19：00開演　一般：前売2,000円 当日　2,500円、高校生以下：前売1,000円 当日1,500円　出演：岩本雄太（サクソフォン）、 大島忠則（ピアノ）　共演：井尻和喜（ヴァイオリン）、岡田真理子（ヴィオラ）、石塚俊（チェロ） お問い合せ：大阪コンサート協会　06-6762-2204
	→プログラムの中に上記、船本孝宏さんの作品が含まれている演奏会です。非常に高い評価を受けている作品である「蒼の鼓動」が演奏される予定になっています。 船本孝宏さんの公式Webサイトはこちら 船本孝宏さんの作曲作品Webサイトはこちら
2010.09.27（月）	「Un parti de la nuit 夜の集い」　お好み工房ほわっと　（出演：池田奈月ほか） クラシック曲に加えて、新進作曲家、船本孝宏さんの曲も演奏される予定です。
	→「ほわっと」のLive情報ページへ（外部リンク） →「夕陽丘高校出身の音楽家」さんたちのページから、「池田奈月」さんのブログも参照してください。
2010.09.25（土）	美術館の調べ第229回　井上麻紀レクチャーコンサート　～ショパンの生涯を追って～　兵庫県立美術館　アトリエ１　開演14：00
	→ピアノ演奏と解説トークと映像が融合したアートフュージョン。作品番号の順に13曲の演奏が予定されています。
鑑賞メモ：	兵庫県立美術館レクチャーコンサート（井上麻紀さん）を聴いてきました。（9月25日） 2008年の神戸芸術センター定期演奏会で初めて拝聴して以来、サロンで、伴奏でジョイントで、そして本格的なリサイタルで、とさまざまな形式の演奏会でその卓越した演奏を楽しませてもらってきた井上さんが、今回、美術館のアトリエを舞台にして、音楽とお話と映像（画像）を融合させた、とても意欲的な芸術パフォーマンスに取り組まれました。 正式な表題は、 「美術館の調べ第229回　井上麻紀レクチャーコンサート　～ショパンの生涯を追って～」 でした。 会場の兵庫県立美術館アトリエ１は、以前にご縁のある方の写真展（というか写真を主として、光と風とオブジェを融合させた展覧会）を見るために訪ねたことがあったのですが、天井がとても高い白壁の立方空間なのです。今回はそこに高さ50センチほどの臨時の舞台が作られて、演奏会仕様にしつらえられていました。 定員150名だったのですが、無料とはいえ、開場まもなく満席となり最後までお客さんが退いて行くことがなかったのは驚くべきことでした。 実際、この日のパフォーマンスはとても芸術的な水準の高いもので、ショパンの生涯をたどりながら演奏を行うだけではなく、アトリエの高い白壁には井上さん自身が撮影したポーランドの写真が大きく映し出され、しかもそれは、四季の移ろいも重ねながら進行するという、まるで複音楽のように厚みのある構成になっていたのです。解説と演奏と映像の提示されるタイミングも入念に構成されていて、もうこれは一つのソフトウェアコンテンツとして独立させることができるものであるとさえ感じました。 演奏されたショパンの名曲は、アンコールも含めて14曲にのぼりましたが、こういうパフォーマンスは、プログラムされた曲が「上手く弾けるかどうか不安だわ」といったピアニストには到底なしえないことで、レクチャーでは、映像提示と同期させるように柔らかく・わかりやすく解説し、演奏では一転集中モードに切り替えてスパッと弾き切る、という、神業的なアートフュージョンだったのであります。 神戸芸術センターでも最近は、表現への情熱にあふれる定期演奏会が増えてきて、リサイタルの枠におさまらない舞台で、聴衆をうならせてくれるアーティストが見られるようになってきましたが、今回は場所が芸術の最高のプロフェッショナルがスタッフとしてサポートしてくれる県立美術館ということもあり、記憶に残る非常に素晴らしい芸術パフォーマンス（もはや「演奏会」の呼称を超えています！）でした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の9月26日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.09.12（日）	SOUP Vol.5 modern music concert ～未来へ･･･～　ノワ・アコルデ音楽アートサロン　豊中市服部本町　（出演：中濱美佐、馬戸香織、竹田奈津、白原理香）
	→バロックから音楽史を順に追ってきた長期計画の演奏会がついに近現代に到達しました。詳細は「中濱美佐」さんまたは「白原理香」さんのページから、公式チラシpdfを参照してください。中濱美佐さんのページには過去2回分の公式チラシpdfもアーカイブされています。
鑑賞日記：	SOUP Vol.５を聴いてきました。
2010.08.28（土）	ナカシオン＆岸部眞明ジョイントライブ　大阪桃谷 Cafe & Live Anie　 開場 18：30　 開演 19：30　チャージ3,000円 （ドリンク別途）
	→アコースティック・ギターのフィンガー・ピッカーとして日本を代表する一人である岸部さんと、同じ分野の国内コンテストで優秀賞を受賞したギタリストＧｉｎ（ジン）さんがヴォーカルＳＩＯＮ（シオン）さんと結成しているユニット「ナカシオン」との共演。すでに7月末に行われて多くの聴衆を感動させた共演が、より本格的な規模で再び実現します。 「Anie」のWebサイトへ（外部リンク）
鑑賞メモ：	岸部眞明×ナカシオン ジョイントライブ 　神戸からの移動になりましたが、結局行きました。そして間に合いました。大阪環状線桃谷駅下車１，２分の会場（Cafe & Live Anie）は、開演30分前にすでにほぼ満席で、予約をしていなかった私はなんとか席を作ってもらって座ることができました。 　進行は、１．ナカシオン（約１時間）、２．岸部眞明（約１時間）、３．ジョイント＆アンコール（約１時間）、という充実の構成でした。新幹線に乗ったら東京まで到着してしまうほどの時間があっという間に過ぎて行きました。 　ナカシオンさんの演奏では、GINさんのギターソロとシオンさんの歌が交互に３曲ずつ。今回で３回目の拝聴になるのだけれど、ますます質の高い演奏を聴かせてくれて「だいたいこんなもんか…」感をまったく覚えることがありませんでした。もはや、どこまでも深いナカシオンの世界にどんどんハマっていく状況に陥ってしまいました。 　何がいいのか？　まず、ギターの音が非常に音楽的で、スチール弦でＰＡも通しているのだけれども、無造作に弾いているような音が一つもない。ギタリストの個性を表すしっとりとした落ち着きのある音色と、大きな音でも小さな音でも、煮崩れしたような不明瞭さのない、一つ一つの粒の形が整った音を紡ぎ出す繊細なタッチ、そして、この音楽分野に特有の特殊奏法（あえてここで解説はしませんが）を本当に音楽表現にとって意味のある形でのみ駆使したヴィルトゥオージティ。 　共演の岸部さんはもちろん偉大なギタリストですが、同じ舞台に立って、ぜんぜん格負けしていません。同じ分野の大御所クラスの人たちにかわいがられている理由がほんとうによくわかります。大御所も一目置く高い音楽性あってこそと言えるでしょう。 　シオンさんの歌は、聴くたびに新たな発見があって、とても深い味わいがあります。なおかつ、ある特定の風味でべったりと最初から最後まで塗りつぶすのではなく、GINさんのギターと同様しっとりとした語り口を基本にしつつも、時には口跡鮮やかな切れ味のよい歌いまわしでキリリと引き締めることもあり、聴き手の心を動かすことに直結した確かな表現力が歌詞に命を吹き込んでいきます。 　さらに、シオンさんの歌への導入はやはり一級品で、もうこれはクラシックの世界の音楽家の人たちも大いに学ぶべきところがあると感じます。あくまで音楽の大きな流れに乗って、ゆるりと揺蕩うように、けれど伝えたい想いはくっきりと、けっして取って付けたような感覚を与えない、音楽と融合したことば。なかなかこれだけの語りができる人はいないです。 　岸部さんの演奏は、いつに変わらず、どの曲も安心して聴くことができたのですが、音楽性の高い共演者がいると触発されるところがあるようで、最後の共演ステージは最高の充実度でした。若いナカシオンの音楽が、ベテラン岸部さんの参加で厚みを増すという面も当然あるけれど、岸部さんの音楽も、ナカシオンと反応していままでになかった新しい魅力がひき出されているように感じられました。 　共演した曲はなんと７曲（アンコール含む）。私を含め、この日会場に集まった人たちの心に焼きついて、いつまでも忘れることができないような名演奏でした。息の合った二人のギターの音が響き合うさまがとてもすばらしく、それにぴたりとはまるシオンさんの歌とあいまって、文字通りの三位一体でした。 　共演する一曲一曲に送られる、会場の尋常ではなく大きな拍手がとても印象的でした。 　そしてそれにまったく違和感を感じない、とても音楽性の高いジョイントライブでした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の8月29日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.08.28（土）	湯川真由ピアノリサイタル　大阪 ザ・フェニックスホール 13：00開場 14：00開演　前売り2,500円　当日3,000円　（なお、9月4日に東京・Hakujyu Hallでも演奏会があります。）
	→2008年9月21日に神戸芸術センター第２回 New Star Concert にご出演の湯川さんは現在オーストリア・ウィーン（コンセルヴァトリウム）に留学中ですが、３年目の節目を迎えるこの夏に一時帰国してコンサートをされます。湯川さんのNSCは、もともとシューマンホールで予定されていたものが（より座席数の多い）芸術劇場に変更になるという異例の演奏会となったもの。使用したピアノはインペリアルで、さすがベーゼンの聖地で学んでいるだけのことはあると思わせる素晴らしい演奏だったことを今でも強烈に覚えています。大阪で都合がつく方にはおすすめです。
2010.08.22（日）	高槻音楽家協会サロンコンサート 総合市民交流センター8Fホール 開演14：30 （出演：吉久夏子ほか）
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	再び吉久夏子さんを聴いてきました。　　 　22日日曜日に大阪高槻市の公立施設で合同演奏会がありました。同市と同市の音楽家協会の共催によるサロンコンサート。フルート独奏、ピアノ独奏、ピアノカルテットと多彩なプログラムで座席を追加しなくてはならないほどいっぱいにお客さんが入っていました。 　５組の中の真ん中だった吉久さんは、ショパンのワルツを第3番、4番、16番、14番、の順で演奏しました。 　kumaが注目していたのは第3番です。別名「悔恨のワルツ」とも呼ばれるという「華麗なる～」とは正反対の曲想の曲です。ショパンが初めて書いた短調のワルツだとか。 　メリハリのある曲を鮮やかに・力強く弾く姿はもう何度も接してきたのですが、思い返してみると、こういうちょっと翳りのあるしっとりとした曲を拝聴したことはあまりなかったのです。はたして吉久さんはどう弾くのか？ 　舞台に進み出て演奏をし始めた瞬間、空気が変わりました。それまで、これじゃあピアニストがかわいそうだなぁとさえ感じていた、お世辞にも状態が良いとは言えない小さなピアノが、とたんにふっくらとした声で、詩情豊かに歌い始めました。一つ一つの音に表情のある、とても音楽的な響き。ピアノを無造作に弾いてポンと出てくる音ではなく、目の前のピアノと対話して、 　「あなたの一番いい声はこのあたりでしょ？」 と、最大限に魅力を引き出してあげて、それを精妙にコントロールして見事に自分の音楽を表現しています。 　「あ～、なんか、むっちゃええなぁ～。ハマるわ～」 などと、もう原始的な感情がそのまま出てきてしまいました。 　つづく３曲、いずれもすばらしく、速いフレーズで音の粒が見事にそろっていてしかも一粒一粒に質感があるし、けっこう低音が痩せているピアノなのにベースラインが明瞭で、メロディと絶妙なバランスで響き合うし、とくに第14番では、弱奏から強奏へ切り返すところで「これぞ吉久さん」というような切れ味があるし。 　合同演奏会なので、一人の持ち時間は限られていましたが、堪能しました。 　しかも無料。 　この日も猛烈に暑かったけれど、聴きに行った甲斐のある演奏会でした。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の8月23日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.08.07（土）	ヨーロッパ音楽旅行～ドイツからロシアまで　文化喫茶「結」　堺市新檜尾台　（出演：Pf.吉久夏子、Vc.時本野歩）
	→詳細は「吉久夏子」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞メモ：	吉久夏子さん時本野歩さんを聴いていました。 ８月７日(土)のことです。演奏会のはしご？はほとんどしたことがないのだけれどこの日は特別でした。聴き逃すことのできない二つの演奏会。まず昼間にあったのが拙Webサイトのartist's roomsで紹介させていただいている吉久夏子さんがチェリストの時本さんと共演する演奏会でした。 吉久さんのモスクワ音楽院仕込みのピアノには神戸芸術センターがオープンした年にプレイエルを使った合同演奏会で聴いて一瞬にしてほれ込み、当時まだ海のものとも山のものともわからなかったプレイエルピアノをこれだけしっかりと歌わせることのできるピアニストはすごい！と感動したのでありました。 その後、小さな演奏会で拝聴する機会はあったけれど、ある程度まとまって曲を聴ける演奏会ではこちらの都合がつかなかったり、チケットがあっという間に売り切れてしまっていたりで、なかなか聴く機会がなかったのです。今回はようやく、吉久さんが主役（の一人）として演奏する機会に都合をつけることができました。 演奏会はまず、吉久さんのソロで、 　　ラフマニノフ：前奏曲 作品3-2「鐘」 　　ベートーヴェン：ピアノソナタ第23番「熱情」（全楽章） 　　ショパン：ワルツ 第16番、第14番 が演奏されました。 地域のコミュニティスペースで行われた演奏会だったのですが、後半のプログラムも含め、リサイタル並みの重量級の曲が並びます。そして、この充実のプログラムに引き寄せられてか、会場はびっちり満員で、熱気に包まれていました。 演奏は、黙々と弾くのではなく、解説やエピソードを交えて進行しましたが、それはけっして「余談」ではなく、その道を究めたピアニストだからこそ語れる内容のもので、ベートーヴェンの作曲プロセスや、楽譜にさまざまな版がある経緯などは、特に興味深いものでした。 さて、演奏そのものは、ピアノがアップライトだったので表現にある程度の制約がつくことはやむを得なかったのですが、しかし、「名人が弾くと、アップライトでもここまで表現ができるんや～」と感嘆するものでした。吉久さんの演奏で以前から強く印象に残っている、ものすごく正確にそろった和音はこの日も健在で、広い音域にわたって寸分の狂いもなく手が跳んで打鍵していく様は、（ヤボなたとえ方ですが）まるで半導体工場の中で働くＮＣ制御のロボットアームのようにさえ見えました。 速いフレーズでの切れ味、表現上のメリハリ、そして、ピアニスト独自の（聴いていて「おぉ～、そうきたかぁ～」と思わせる）息遣いやノリ、すべてがリサイタル並みの高水準で、「今日は聴きに来た甲斐があったなぁ」と思っていたのですが、感動はこれにとどまりませんでした。 休憩をはさんで後半、同じくロシアに学んだ時本さんが演奏されたプログラムは、 　　ハイドン：チェロ協奏曲ハ長調より、第１楽章 　　ラフマニノフ：チェロソナタ作品19より、第１楽章 　　ゲンズ：スケルツォ でした。 「えっ！」と思われた方があるでしょう。しかし、誤記ではありません。ラフマニノフのチェロソナタ作品19です。第１楽章だけとはいえ、すごい曲がプログラムされていました。予習で音源を聴いていて思わずため息が出てしまった大曲。ピアノ伴奏の密度・難度がハンパではないのです。時本さんいわく、「最初に伴奏を依頼した時には、即断られました」と。でも結局は、第一楽章だけとはいえ、伴奏をしてしまう吉久さん、すごいです。もちろん、依頼したほうもそれなりの覚悟での話ですから、この曲の演奏は今日のプログラムの中でもっとも精彩を放つものとなりました。そして、聴き手に一瞬の気の緩みも許されないような緊迫感に満ちたものでした。すばらしい！ ハイドンの楽しげな宮廷音楽、ゲンズのその曲名の通り面白くて気の利いた音楽に前後を挟まれて、とてもまとまりのよい、ストンと落ち着くプログラムでした。指定された席の関係でチェロの演奏をかぶりつきで聴くことになったのもいい経験でした。楽器の振動がビンビンと体に伝わってきて、とても刺激的でした。 最後に、プログラムに印刷された歌詞を参考に、ロシア民謡から「トロイカ」と「カリンカ」を合唱しました。なぜロシアなのかって？　書き遅れましたが、この演奏会は、「大阪からロシアを広める会」の主催で、司会進行もロシア人の方がされたのでした。 演奏会終了後、ものすごく久しぶりにリアル吉久さんと、そして初対面の時本さんともお話をすることができ、最後まで印象深い演奏会となりました。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の8月8日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.08.06（金）	Concert melange　（出演：井上美和、竹田景子ほか）　兵庫県立芸術文化センター　神戸女学院 小ホール　開場18：00 開演18：30　2,500円（全席自由）
	→6月6日に神戸芸術センター第34回定期演奏会ご出演の竹田さんが、（今回）井上美和さんが世話人をしている合同演奏会で演奏されます。詳細情報は会場のWebサイトで確認できます。
鑑賞メモ：	ムーケ「パンの笛」、フランク「前奏曲、コラールとフーガ」（など）聴いてきました。 ８月６日のことです。 あまり著名な作曲家ではありませんが、どちらの曲も素晴らしかったです。良いホール（神戸女学院小ホール）、良いピアノ（スタインウェイ）、そして良い演奏家と三拍子そろったコンサートで空間に広がる音を楽しむことができました。 ムーケの曲は、笛一本でよくこれだけ広い空間に色彩感豊かな音を満たすことができるなぁ、と感心して聴いていました。明るく軽やかで自由奔放な第一楽章、小鳥のさえずりのようなフレーズから、聴かせどころの情感豊かな旋律をしっとりと歌い上げる第二楽章、そして、妖精たちが元気に駆け回るように始まって、さまざまな表情を見せる旋律が次々と現れて、とても昂揚感のある曲末に至る第３楽章。ピアノの伴奏ともよくなじんでいて、今まで知らなかった曲を、最良の響きで聴くことができ、感動しました。（フルート：宗本舞さん、ピアノ伴奏：細田紗希さん） フランクの曲は、「前奏曲とフーガ」の間に「コラール」が挟まったもので、厳密にニュアンスを訳出すれば、「前奏曲とコラールとフーガ」あるいは、「前奏曲、コラール、そしてフーガ」とするのが適切でしょう。 この曲も今まで全然知らなかったのですが、素晴らしい曲でした。音域の広い深々としたアルペジオの響き、三連符が印象的なコラール主題で音色が微妙に移ろいゆくさま、フーガでの４声の絡み合いと半音階で滑り落ちてくる不思議な感じ、そして、中間部からなんと、コラールの主題がフーガの主題に交錯してどんどん緊張感が高まり、高揚してくる終結部。 いやー、なんというか、20分もかからない曲なのですが、ものすごく充実した構成の曲でした。そして、単純にメロディだけを聴いてもとても印象的でした。（ピアノ：竹田景子さん） 他の曲も演奏される合同演奏会でしたが、この二曲は特に印象に残りました。いろいろな機会をつかんで、知らない曲こそどんどん積極的に聴くべきだなぁ、と今回もまたつくづく感じた次第です。 後者はピアノ曲で作曲家没後50年以上たっているので、誰か神戸芸術センターでも演奏してくれないかなぁ。 （この鑑賞メモは、当初「E135 DIARY （admin.'s soliloquy）」の8月7日の記事として掲載したものを、整理・保存のために再収録したものです。）
2010.07.25（日）	歌とピアノで思いっきりロシア♪コンサート　岸和田市立自泉会館ホール　昼の部 開場13：30 開演14：00、　夜の部 開場17：30 開演18：00　前売：2,500円、当日：3,000 （全席自由）
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
鑑賞日記：	「モスクワ音楽院三人組”輝くトロイカ”」を聴いてきました。
2010.07.17（土）	「ブラームス/クラリネット五重奏」　お好み工房ほわっと　（出演：池田奈月ほか）
	→詳細は「ほわっと」のLive情報ページへ（外部リンク）をご覧下さい。また、「夕陽丘高校出身の音楽家」さんたちのページから、「池田奈月」さんのブログも参照してください。
2010.07.15（木）	谷口博章ピアノリサイタル　兵庫県立芸術文化センター　神戸女学院 小ホール　開場18：15　プレトーク18：45 開演19：00　700円（全席自由）
	→井上麻紀さんや田中正也さん同様、神戸芸術センターで聴衆に音楽の楽しみをたっぷりと与えてくれる演奏会を開催した谷口さんが、ＰＡＣでリサイタルです。主催者が公的な団体なので料金も格安！　平日の夜ですが、これを聴き逃す逃す手はありません。予定曲目は、バッハ、ブラームス、ベートーヴェン、ショパン、他の作品で、幅広い客層が楽しめるように考慮されています。
鑑賞メモ：	西日本では、ここのところずっと大雨が続いている中でのリサイタルでした。昼間は薄日も差していましたが、この日の聴衆が仕事を終えて西宮に向かい始めるころに、空はにわかに暗くなり、ポツポツと降り始めた雨があっという間に土砂降りになりました。この雨がまだ降り続いている中でリサイタルは開場時刻を迎えました。 　７時開演で開場は６時15分。小ホールなのに、この余分とも思える15分は何かというと、谷口さんの演奏会につきものの「プレトーク」の時間だったのです。開演15分前にステージに登場した谷口さんは、マイクを持って今日の演奏の曲目などについて、初めての人でも楽しむことができるようにとてもわかりやすい言葉と語り口で導入の話をしました。最初のプレトークでは、使用ピアノ（ベーゼンドルファー・インペリアル）と、プログラム前半の３曲について解説がされました。解説内容は、その曲が生まれた背景やその曲が様々なピアノ曲の中で持っている意義などにおよび、楽譜のテクニカルな分析というよりは、その曲を作品として理解するための助けになる情報を、「おいしいところ」を選りすぐって提示してくれるものでした。 　今日はこれに加えて、このリサイタルを主催した西宮市職労婦人部の部長さんのご挨拶があり、西宮市長さんからのメッセージも読み上げられました。「公務員ピアニスト」谷口さんの演奏会ならではの光景です。 　演奏会は定刻に始まりました。前半で演奏されるのは、バッハ：平均律クラヴィーア曲集第２巻第７番、ブラームス：シューマンの主題による変奏曲、ベートーヴェン：ピアノソナタ第８番「悲愴」の３曲。ステージに再登場した谷口さんは、黒の蝶ネクタイの夜会姿がバッチリと決まっていました。 　聴衆の緊張感が最高に高まった中で聴こえてきた最初の音は、外のうっとうしい天気を忘れてしまうような、上品な艶と輝きのある、しかもしっかりとした存在感を感じさせる音で、フーガ部分では中音部の力強い密な音も姿を現してきました。演奏会一曲目は、はんなりとした綴れ織りのようでした。二曲目は、「色とりどりの小品」とも呼ばれるシューマンの作品99の、「５つのアルバムの綴り」または「５つの音楽帳」の第１曲を主題にした、16の変奏曲。最初に主題がそっと提示されるのですが、その弱奏が実に繊細かつ解像度が高く、「あ～、インペリアルの音やなぁ」と思わず心の中でつぶやいてしまいました。が、この音はたんにピアノがインペリアルであれば誰が弾いても出るという音ではないのです。ピアノが繊細にうたうことと背中合わせに、少しでもピアノの機嫌を損ねると、とたんにヒステリックな音になってしまいます。これは強奏についても同様です。変奏がついにこの曲で一番の強奏の部分に達したときにピアノから聴こえてきたのは、抜けのよい空気感のあるすっきりとした、しかしとても豊かな響きでした。 　私がこれまでに聴いたことのあるどんな録音よりも表情豊かに奏でられるこの曲を聴きながら、心はもはや演奏の良し悪しではなく、ブラームスがシューマンの小さな小さな曲を主題にして、こんなにもたくさんの変奏曲を書いた、その気持ちに及びました。愚考するに、作曲者にはこの短い旋律に託して、それだけ様々に表現をして伝えたいことがあったに違いありません。溢れる想いが数々の変奏にその身を映し、言葉で語る以上に相手に伝わることを願ったのかもしれません。あるいは、言葉では語れない想いがその中には表現されているのかもしれません。私たちが表現への情熱に駆り立てられるとき、その源となる力はどこから生まれてくるのでしょう。そんなことを考えながら、谷口さんのすばらしい演奏を聴いていました。 　三曲目はあまりにも有名なベートーヴェンのピアノソナタ。もちろん、楽曲の力もありますが、それを実際に音として私たちに届けてくれるピアニストの感性と、演奏における奮闘ぶりはもう、演奏が終わった後に思い切り拍手をして表すほかないほどのものでした。 　第一楽章では、谷口さん独特の、過度ではないけれども思わず「しびれてしまう」ような魅力的な緩急があって、その息遣いに乗って、分厚いのだけれど柔らかいふくらみのある響きが、ホール全体を包み込んでいくような印象がありました。掛け合うように演奏される左右の旋律の絡み合いが絶妙で、「立体的」な演奏とはこういう感じのことを言うんやろなぁ～、と唸ってしまいました。第一楽章の終了後に思わず拍手をしてしまったお客さんがいましたが、「その気持ちようわかるわ～」と私自身も思いました。 　第二楽章では、最高に美しいインペリアルの声が、gentleかつlegatoに（英語とイタリア語のチャンポンですが…）、歌い上げました。このときの聴衆の旋律への集中の度合いたるや、ものすごいものがあって、作品とピアニストとピアノが最高のバランスで融合した世界に、どこまでも深く惹き込まれていくようでした。 　第三楽章。フィナーレに突き進む谷口さんの姿は、完全に手の内に収めた曲を最高の状態で締めくくるために疾走しているという感じで、すっと背筋を伸ばし首を左右に少しだけ振る所作が印象的な、ピアノと一体化したような冷静な演奏がぐいぐいと進行し、昂揚する感情の頂点を極め、スパッと両手を振り上げて、演奏会の第一部が締めくくられました。 　休憩に入る前に、いましがた「悲愴」の演奏を終えたばかりの谷口さんが再びステージに出てきて、後半で演奏される曲の解説が入りました。中間なので「プレ」トークという呼称が適当なのかどうか分かりませんが、ともかく、後半の演奏の「前」というわけです。トークでは、ポイントとなる箇所を解説するのに、ピアノで実際に音を出してくれるなど、どこまでもお客さん本位で、幅広い層の人が聴きに来ているこの日の演奏会にぴったりのものでした。前半後半のプログラムを通して見てみると、「バロック－古典派－ロマン派－近代」と時代の流れに沿って展開しており、「意欲的なプログラムです」と自分で自分を評して、会場の笑いを誘っていました。 　後半の曲目は、ショパン：ノクターン第２番、練習曲作品10-3、同作品25-12、カバレフスキー：ピアノソナタ第３番、でした。 　一曲目のノクターンは、過度に気持ちを入れ込み過ぎない、すっきりとした演奏が印象的でした。高音の音色が、とくに曲末近くのそれが非常に美しく、不純物が一切混入していない完全結晶が一条の光のもと輝いているような光景を髣髴としました。 　二曲目、別名「別れの曲」は、誰もが知っている作品ですが、谷口さんの演奏では、細部まで気持ちの行き届いた、一部の隙もなく構築された音楽に驚いてしまいました。全体を通して、必要以上にリズムを溜めることのない、滔々と流れるよどみのない演奏でした。 　三曲目は、別名「大洋」とも呼ばれるそうですが、文字通り（海の）水の質量感を感じるとても分厚い音で、雄大なアルペジオが奏でられました。 　ここまで三曲を続けて聴いてきてハッと気づいたことがありました。それは、「大洋」をはじめとして、谷口さんが演奏するショパン作品には男性的な響きが感じられるということです。やたらロマンティックなものから攻撃的なものまで、様々な解釈のショパン作品が録音されているなかで、谷口さんの演奏が位置する場所のようなものがおぼろげに見えたような気がしました。 　いよいよ最後の曲となりました。実はこの曲についてはよく知らなかったので、ＣＤを聴いて予習をしてから今日の演奏会に臨んだのですが、その録音よりも何倍も豊かな表情を持つ響きが立ち上がってきてびっくりしてしまいました。そして、第一楽章では、プロコフィエフ作品的な、戦慄を覚える最強奏で迫ってくる部分、ここぞとばかりにインペリアルのエクステンドベースを効かせて、ホールの中に強烈な音圧の渦が巻き起こった瞬間には、まるで自然現象の中にいるような大きなエネルギーを感じました。強奏の部分はしばらく続くのですが、最大限の激烈な音を表現する場合でも、完全にピアニストのコントロールの下にあり、ピアノが暴走してしまっているわけでは決してないところが、驚嘆すべきものでした。インペリアルの特性を十二分に理解していなくては実現し得ない、たんにこのピアノを破綻させないように弾くだけにとどまらず、潜在的な表現能力の限界をきわめるような、聴き手に息を呑む緊張感を与えてくれる刺激的な演奏でした。 　第二楽章は穏やかなテンポで語られるのですが、全体を支配する腹に響くような太い低音が印象的で、個人的に、こんな変わった感じの響きをもったソナタ（の楽章）は聴いたことがないなぁと思い、とても興味深かったです。インペリアルの拡張された９本の低音弦が、そのものを弾かなくても共鳴して厚みを与えている感じがあり、今日の演奏会でこのピアノが選ばれた意味はこんなところにもあるのかな、と思って聴いていました。 　第三楽章では、ふたたび躍動的になり、冒頭のちょっと面白みのあるリズムで奏でられるきらめくような高音、続くたたみかけてくるような和音の連打、地鳴りのようにうごめく重低音、そしてまた面白いリズムへ、･･･とめまぐるしく展開し、最後に力強く重厚な響きで締めくくられました。 　なんというか、私が今まで谷口さんにいだいていたイメージを塗り替えてしまうような、タイトで厳しい、疾走感のある曲でガツンと締めくくられたのを聴いて、私は今まで谷口さんのピアノ音楽の限られた面しか見てこなかったのかもしれない、とさえ思ってしまいました。ものすごく強い印象が心の中に刻み込まれました。 　いったん袖に下がった後、割れんばかりの大きな拍手に応えて再び舞台に出てきた谷口さんは、ぐるりと取り囲んだ客席のすべての方向に向かって、深々と腰を折る礼を繰り返し、とても丁寧なステージマナーで謝意を表わしていました。そして、マイクを取り、「今日は、シューマンの話はしたけれどもシューマンの曲そのものは弾いていなかったので」ということで、アンコールにトロイメライが演奏されました。そしてここでは、この日一番のピアニシモを聴かせてくれました。思わず息を詰めて聴いてしまう、極小音による最高に美しいピアノ表現でした。 　この後、再度舞台袖に下がりましたが、こんなすばらしいアンコール曲を聴いて拍手が鳴り止むわけもなく、さらに大きくなった拍手に呼び出されて再び舞台へ。アンコールの二曲目は、昨年神戸芸術センターのシューマンホールを満席にして行われたNew Star Concertを聴いた人にはおなじみの、ブラームスの８つの小品（作品７６）より、カプリッチョ嬰ハ短調でした。谷口さんがトコトン研究したという想い出深い曲が最後の締めくくりとなりました。
2010.07.10（土）	針山憲夫のクラリネットファンタジー　集・空・間 Tio （JR芦屋・阪神芦屋より徒歩５分、TEL：0797-25-0177）　開場13：30 開演14：00　2,500円（お茶とお菓子つき）
	→かつては元町のアマデウスで年に３回定期定期に開催されていた人気のシリーズが、近年は会場を変更して継続しています。巧みな話術と幅広いレパートリー、そして共演者との即興的な表現が非常に刺激的で、何度聴いても飽きることがありません。針山さんは活動の場（居所）を東京に移されましたが、このシリーズが関西で継続していることはとてもうれしいことです。何も知らずに行っても、初めて聴いても楽しめる、聴き手の満足度がとても高い演奏会シリーズです。 →会場Webサイトへ（外部リンク）
鑑賞メモ：	会場が元町からTioに移ってから（Kuma自身としては）初めての拝聴でした。おなじみのナンバーから始まりましたが、今日の目玉は何と言ってもサンサーンスの「クラリネットソナタ」でした。全４楽章をすべて演奏。針山さんのCDにも録音があるのですが、LIVEで聴く演奏は格別でした。クラリネットは言うまでもなく、ピアノ伴奏にも熱を帯びて迫ってくるものがあって、感動スイッチがONになりました。針山さんは、軽妙なジャズももちろん演奏するけれど、同じ演奏会の中でクラシックのソナタもカッチリと決めてくるところがすごいのです。 　第一部の後半は、ピアニスト加藤理彩子さんのピアノソロが３曲。ショパン作品が３曲演奏されましたが、２曲目にノクターンop.62-2が演奏されたのがうれしいサプライズでした（事前に曲目は明らかになっていませんでした）。後半に出てくる愁いを帯びた旋律が印象的で、有名な「遺作」に劣らず惹き込まれてしまいました。 　第二部は、リズミカルな曲も多いジャズナンバー。今回、羽の生えたように軽やかな音のピアノ伴奏で、これまでに聴いてきたものとは一味違う演奏を楽しむことができました。 　アンコールは、夏にちなんで「うみ」（うみはひろいなおおきいな）と「海」（まつばらとおく）。針山さんが「いっしょに歌いましょう」と誘うと、美しい声がぴったりと揃った合唱になったのでびっくりしてしまいました。(^^;)
2010.06.27（日）	三木市文化会館　クラシック友の会 　第51回コンサート ～ショパンからの贈り物～　「奇跡の出会い　田中正也と佐藤卓史」
	→詳細は「田中正也」さんのページから、公式Webサイトを参照してください。
2010.06.26（土）	井上麻紀　ショパン生誕200周年記念 オールショパンピアノリサイタル　兵庫県立芸術文化センター　神戸女学院 小ホール　開場13：30　開演14：00
	→2008年は神戸芸術センターの定期演奏会、2009年はショパン没後160周年のジョイントコンサート（共演：坂本知穂さん）ですばらしい音楽を聴かせた井上さんが、2010年はPACの小ホールでオールショパンプログラムの演奏会です。同じアーティストでも会場＆ピアノが異なると驚くほど響きが変わってくるので、その点も興味深いものがあります。
鑑賞メモ：	最高の響きのホールに最高の状態に調整されたピアノで、洗練の極みという感じの演奏会でした。プログラム最後の『アンダンテ･スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、多彩な音色と大きなダイナミックレンジで圧巻の演奏でしたが、「４つのマズルカ」作品17の第2曲と第3曲で、思わず息をつめて旋律を追ってしまうような「間」があり、強く印象に残りました。 　「お楽しみ」のコーナーではなんとヴァイオリニストが登場。これには会場が大きく沸きました。ショパンではないけれどポーランドの名曲（ヴァイオリン作品）が演奏されました。ソロでの演奏だけでなく伴奏も見事で、「お楽しみ」というのは、たんなるサプライズを超えて、井上さんの卓越した伴奏をも楽しませてくれるものとなりました。

2010.04.17（土）	船本孝宏 作曲作品スプリングコンサート ～春風と共に～ 大阪市立青少年創造ステーション（通称：ココプラザ） ２階ホール「エキスプレス・ココ」（４月より「大阪市立青少年センター」に改称)　開場18：００　開演18：30　一般1,500円、高校生以下1,000円（当日はそれぞれ500円増し）　演奏：池田奈月、半澤佑果、清原久恵、山本香菜、内宮千尋、ほか） 船本孝宏さんの公式Webサイトはこちら 船本孝宏さんの作曲作品Webサイトはこちら 会場のＷｅｂサイトはこちら
	→大阪府出身の若手作曲家の個展演奏会（第２回）。「やさしい音楽」と評される繊細な作品が多く、昨年末、船本氏の「クラリネット組曲」を聴いたkumaも世評には納得です。予定されている９曲を、夕陽丘高校をはじめ地元に縁のある高校や大学出身の１２人の２０人を超える音楽家が演奏します。
鑑賞メモ：	一人の若手作曲家の個展演奏会、というそうよくあるイベントではないにもかかわらず、神戸芸術センターの音楽ホールよりも多い座席が、寿司詰めで座っているわけではないとはいえ、最後列まで埋まるほどの盛況でした。 　作品を演奏する20人を超える若手音楽家たちの水準は非常に高く、クラシックの名作を聴いているかのような息詰まる名演が繰り広げられる光景もありました。 　その名も「船本孝宏スペシャルオーケストラ」が最後の曲として2010年作曲の最新作品を初演した後、アンコールは４曲におよびました。